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9巻

 地下闘技場での鎬紅葉との闘いを終えた刃牙が青木ヶ原樹海へと向かい、巨木の元、自己の過去を回想する幼年期編がこの巻からスタート。

 樹海へと向かう途中での刃牙のモノローグ、「オヤジあんたは......!」「あなたはもう......」「目の前だ!!!」

んなワケねえ。

 幼年期編といっても13歳時代、地下闘技場チャンピオンである現在からたかだか4年前です。今現在「少年」なので、この過去のエピソードを少年期編なんて言い方も出来ない故の苦肉の表現でしょうか。

 13歳刃牙、髪の毛も赤くてチリチリ(くせ毛か?)で、不良デザインです。8巻までで主人公の刃牙というキャラは闘い方が描かれた一方、性格がほとんど不明瞭だったので、この幼年期編にてその部分に少しずつ肉付けがなされていきます。20巻まで長々続いたのは果して当初からの予定だったのでしょうか。この頃は父親の闘いを尊敬している様子です。

 一対多という変則的バトル、学園での日常、そして刃牙の母親がどうにも大富豪らしく、近代的なトレーニングを刃牙が積んでいるコトが描かれています。


10巻

 刃牙の対戦相手候補として二人の強敵の存在が描かれるこの巻。花山組2代目組長/花山薫15歳とプロボクシング世界Jr.ウェルター級王者/ユリー・チャコフスキー。

 花山は非常に人気の高いキャラです。僕も刃牙の中で花山が一番好きかも。考えてるコトが花山自身の言葉(フキダシや写植重ね)で表現されるコトが皆無のキャラです。故に、何考えてるか分からないキャラであると同時に、不言実行オーラが出ています。

 巻の前半はこの花山の強さを当て馬ボクサー/トニーを通じて表現されます。ごっつい指で、重ねられたトランプを纏めて引きちぎる等、花山の異様なまでの「手」の力が見られます。

 ユリーと刃牙の対戦が後半描かれ、刃牙は破れます。13歳が世界チャンピオンに善戦する時点でとんでもないんですが、刃牙は悔しくて泣きます。ところでこの頃の刃牙ってやけに飛び跳ねてますね。


11巻

 裏表紙が不気味過ぎる11巻。何ですかコレ。

 ユリーに勝つためにはパワー/スタミナ/テクニック、全てを最初から作り直さなければならない。そう感じた刃牙が飛騨へと山籠りへと向かいます。そこで待ち受けてるのが夜叉猿。僕が刃牙ワールドにファンタジーを感じるのはコイツのせいです。だって、架空ですから。登場人物ももちろん架空ですが、これは生物として架空です。

 一度は夜叉猿の恐怖に飲まれた刃牙ですが、再戦に向けて猛トレーニング。エンドルフィンを出せるようになる、更には『死に際の集中力』をも身に付けます。エンドルフィンってのは最大トーナメントでも出てきてますが、『死に際の集中力』ってのはコレっきりなんでしょうか。それとも、頻繁に出ている(恒常化されている)んだけど、イチイチそんな表現を使ってないだけなのか。


12

 この巻には「刃牙VS夜叉猿」決着、そしてユリーへと迫る花山までが収録されています。

 板垣恵介がグラ刃牙増刊号で「最強を求める上で回避出来ない相手」として『不良/猛獣/ヤクザ/軍隊』、この4つを挙げていた記憶があります。この夜叉猿との闘いは『猛獣』に該当しますが、こうしてみるとこの幼年期編で既にこの4つの存在と刃牙は対戦していますね。

 刃牙の全身に這う引っ掻き傷はこの夜叉猿戦にて付けられた模様。夜叉には常識的な闘いのセオリーが通用しませんでしたが、この辺花山戦にプラスになった感じかも。

 んで、夜叉との闘いを経て成長した刃牙ですが、当初ユリーとの再戦に向けての特訓だったのに、一気にユリーを上回ったらしい。刃牙の母/朱沢江珠は当初花山をぶつけようとしていたものの、息子の成長を知り花山を取り下げユリーとの対戦を組もうとします。やはり、その辺のヤクザよりもボクシング世界チャンピオンって肩書きの方が響きが良さそうですから。

 最後は試合前のユリーの前に花山登場、あっさりとユリーを沈めます。世界的に名が知られてる存在よりも、ひっそりと一部の間で実力が知られてる隠れた逸材であったコトが判明。


13

 前半は花山の強さに関するエピソードが幾つか描かれています。

 薔薇の香水が好きだったと語る母親を思い出しながら、薔薇の花束から花びらをむしり取り、更にそれを握り締め、数滴のエキスを絞り出す。そしてそのエキスを病いでガリガリになった母親の頬へ付ける。板垣ワールドに於ける母の存在の大きさを語りつつ、花山の握力の凄まじさをも表現。にしてもこのシーン、気を抜くと「老いた母を見舞う息子」に見えてしまうんですが、花山薫はまだ15歳ですからね。

 殴る/蹴る/引っ張る/持ち上げる、という具合に自分の肉体のみの力でキャデラックを破壊。他にもこの段階では『謎の現象』止りの攻撃、花山に捕まるとその部分が爆発するについても触れられています。

 そして巻の中盤からいよいよ刃牙VS花山開始。場所はフクロウビル最上階ゲームセンター。ガードをしない男/花山の刺青「侠客立ち」も公開され次巻へ突入。ていうか花山ホントキャラ属性沢山あります。


14

 刃牙VS花山決着、そして範馬勇次郎の登場までを収録。

 花山の謎の攻撃が『握撃』と判明。花山のみが持つ、神に与えられた超握力で対象の身体を握る。その結果、圧力によって行き場を失った肉や血が体外へと爆ぜる。

 一方の刃牙もまた「力の流れが見える」天才性を披露し反撃。最後は打撃戦の応酬にて勝負終了。一応「おまえの......勝ちだ......」と花山は刃牙に語りますが、ドローにも等しい幕引き。

 そしていきなり勇次郎が乱入し、花山にトドメを刺したと思ったらさっさと帰ります。まさに鬼。


15

 幼年期編のこの巻の序盤3話分は、勇次郎と江珠(お互いに19歳)の出合いが描かれています。江珠、梢江似です。外見は作者の画風なので度外視しても、おどおどした性格もまた梢江似です。 つまり、未来の梢江が何となく想像出来る感じです。

 江珠が朱沢グループの総帥/朱沢鋭一と結婚、その夜に範馬勇次郎が鋭一を殺害。朱沢グループの莫大な財産を手にした未亡人となった江珠。警察への犯人の人相の供述もウソ言ってます。おどおどした性格は芝居ですか。梢江もそうなのか?

 鋭一を殺したその場で勇次郎の種を宿し、刃牙を鋭一の子として偽って育ててる、というのが順当な考えだと思うんですが、範馬姓を名乗ってる刃牙が不思議。朱沢グループの実権を握った後で『実は範馬勇次郎の子だよーん』とカミングアウトしたんでしょうか、江珠。

 んで、花山戦を終えた刃牙へと話は戻ります。ここに来て刃牙は自分と父親では『最強』に求めてるものが異なるコトを認識します。絆。ボクシング世界チャンピオン/猿/ヤクザとの闘いを経て、今までは憧れの存在だった父親との一つの決別。

 最後は父親との決戦を1ヶ月後に控え、最後の成長を賭け、刃牙は戦場にも匹敵する場所へと向かいます。北海道大雪山系での自衛隊5名からなる最小にして最強の部隊との闘い。刃牙、パラシュート降下していきなり捕まりましたが。


16巻

 北海道大雪山系における5名の防衛庁精鋭部隊を相手取った刃牙の闘い。そしてこの5名の中に、オーガこと範馬勇次郎に匹敵すると言われる超軍人ガイアがいる。

 ナイフ/酸入りカプセル/ワイヤー/関節部分に装着してる刃物といった武器の使用、背後からの不意打ちや土塊での目潰し、一対多など、フェアープレー精神をむしろ悪徳と看做す、戦場に於けるストロングスタイルの洗礼を受ける刃牙。そういやここで使われてる武器って「死刑囚編」でも大活躍ですね。「死刑囚編」はこのガイア編をエスカレートさせたような印象もあります。

 ナイフ使い/倉石/ノムラ/双子、と5名の精鋭部隊を倒した刃牙の前に現れるのが、ノムラのもう一つの人格「超軍人ガイア」。このガイア戦は僕が選ぶなら幼年期編でのベストバウトです。ていうか「グラップラー刃牙」トータルで見てもベスト3に入ってるかも。

 刃牙の攻撃が一切ヒットしないガイアの謎が描かれ、次巻へ。


17巻

 ガイアへの攻撃が一切当たらないその理由は、紙一重でかわしていたから。ガイアは相手の攻撃が予兆として見える(確か連載時には扉アオリでこれを『闘気読破』なんて表現していたと思う)。

 どうしてそんな能力が身に付いたかと言えば、過去に戦場で処刑されかかった時、自分に向けられた殺気(100の銃口)を感じ取って以来。普段は見逃している殺気というものを、一度強烈な濃度で叩き付けられて以来、殺気を拾う回路がガイアの中に開通したというコトでしょうか。この事件後、ガイアは相手の『意志を持った自分への攻撃』を事前に察知出来るようになった。

 何だか神憑かり的なパワーアップです。ガイア戦終盤では刃牙も幽体離脱していますが、死線を一度越えた人間には何か説明出来ない不思議な力がある、と板垣氏は考えてのコトなのかも。

 全ての攻撃を読まれる相手に刃牙が取ったのは「読まれようがとにかく連攻」。押され始めたガイアですが、ここでとんでもない必殺技「鼓膜破り」を披露。ヨガ行者が一日で消費するだけの空気を肺に取り込み、一気に大声として出す。ところで自分には効かないのかコレ。

 多重人格/アドレナリン操作/闘気読破/笹ナイフ/鼓膜破り/水弾/蔓技など盛り沢山な内容のガイア戦でした。16/17巻できっかり纏まってるのもイイ。


18巻

 ガイア戦を終え、勇次郎との決戦を控えた刃牙が技術の「詰め」に入ってる巻。居合/ボクシング/フェンシングなどを相手取りっての看板破り。接触してからのカウンターがどうやら得意技の様子。これは「バキ」5巻でも柳の風神鎌を同様のやり方で封じています。

 対する勇次郎も闘いの予行として、総理大臣官邸を襲撃する、鋼/チタン合金から構成される巨大な弓矢の頭を押さえるなど桁違いのパフォーマンスを見せています。

 そして決戦の場は米軍横田基地。徹夜で花山と酒を酌み交わすなどという、コンディションに悪影響しそうなマネをしてます。更に12時間前からウォーミングアップを開始する刃牙。こんなコトしてたら負けます。

 全体的に、幼年期編最終バトル「範馬刃牙VS範馬勇次郎」前の繋ぎ的な内容の巻ですが、妙な緊張感が終始漂っています。


19巻

 ウォーミングアップの不良5人掛け、第2部「バキ」でも似たようなシチュエーションがありましたが、液体(濃硫酸)をかわすなんてトンデモぶりで、幼年期に軍配が上がる感じ。

 そして再起不能だったハズのユリーと花山を相手取ったウォーミングアップを刃牙が続けてる中、勇次郎はホテルの一室にて、飾ってある植物を睨み続けています。その殺気を感じ取ってか、花は少しづつ散っていきます。

これってアリなの? 

そういや中平版ストリートファイターの漫画で、豪鬼が「殺意の波動」を帯びた途端に周りの草木が自殺しはじめたシーンもあったなあ。

 巻の中盤でいよいよ勇次郎との闘いスタート。戦闘序盤で(俺の2倍...)(いや......ッ)(俺の4倍は強エエ)という写植があります。これは花山の顔のコマに被ってるので花山の心理に見えますが、どうなんでしょうか。僕的には(地上最強って......)(ハンパじゃない!)から繋がってる刃牙の心理描写なんじゃないかなと思ってるんですが。花山は考えてるコトを文字(写植)で表現されないキャラだと思うので。

 ラストは刃牙の十八番、「相手の攻撃が接触してからの回避兼カウンター攻撃」を勇次郎が更にカウンターで返して次巻へ。


20巻

 幼年期編ラストの巻。板垣宇宙での最強の存在「母」が炸裂。

 勇次郎の愛を勝ち得る為、自分が生んだ子供(刃牙)さえも、男(勇次郎)を喜ばす為の道具として利用してた母(江珠)。勇次郎が何よりも喜ぶのが闘い。だから刃牙を強い格闘士として育て上げた。しかし、勇次郎にトドメを刺されかけてる刃牙の顔を見た瞬間、江珠の中で何かが弾け飛び、勇次郎に立ち向かう。

「おまえが女を棄て 母を獲るとはな」

そして勇次郎に残殺。この瞬間、「子は父を越えねばならない」という作品テーマへのストーリー面での肉付けが完成。しかし殺すか。

 その後、海外へと武者修業に渡る刃牙。アメリカ、ブラジルを経て再び日本へ。闘いの聖地/東京ドーム地下闘技場の存在。徳川邸に殴り込み同然の方法で戦士登録の許可を貰いました。加納に「虎王」喰らわしてますが、「餓狼伝」に比べると、絵がちゃちいのなんの。

 と、この「幼年期編」、時間軸は「地下闘技場編」より過去ながら、連載はそれよりも後だったので、板垣自身の漫画の表現手法/描写技術があれこれとパワーアップしています。その為、何故か「地下闘技場編」よりもバトルに迫力があったりします。


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