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●21巻

 長い幼年期の回想を終えた刃牙が目覚め、いよいよこの巻から「最大トーナメント編」に突入です。まだ「最大トーナメント編」という表現に固まっておらず、「新・地下闘技場編いよいよスタート」などと謳われています。

 時間軸の流れとしては8巻の続きになります。この巻の序盤では、愚地独歩率いる神心館空手の最終兵器/愚地克巳が登場。独歩の養子です。無頼を極め、刃牙のライバル的存在となるハズだった加藤清澄が克巳の名を聞いた途端、

「冗談はよしてくれよ...館長...だってあの人は...アンタ...」

「克己さんは来たる世界大会用のキリ札として...」

などと冷や汗をかきながら焦り放題。克己さんと来たもんだ。

 独歩VS勇次郎が描かれた地下闘技場、勇次郎の子供/刃牙に対するライバルとして相応しいキャラが遂に登場。いま振り返って見れば凄いミスディレクションだったワケですが。

 そしてこの巻の見どころは選手入場たる「第185話 祭りが始まった!!」でしょうか。1話で60ページという連載時にはもの凄いコトをやってのけたんですが、その内半分ほどのページを消費して、絶叫アナウンスと共に全選手の入場シーンが描かれてます。この絶叫アナウンスは2ちゃんねるでもパロスレが大量に立ち上げられるほどの内容です。

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1回戦第1試合/範馬刃牙VSアンドレアス・リーガン(勝者:刃牙)

 そういや準決勝にて勇次郎が「範馬の血」を目覚めさせるに至らなかった刃牙の今までの対戦相手を色々と思い起こしていますが、そこに「巨漢も!」との言葉と共にマウント斗羽の絵が重ねられています。斗羽に「どきなよ チビ」と言い放ったリーガン、まるで立場ないです。

1回戦第2試合/ズールVSデントラニー・シットパイカー(勝者:ズール)

 ズールなんて変な選手どうやって連れてきたんでしょう。言葉分かるヤツいないし。


22巻

1回戦第3試合/ロブ・ロビンソンVS猪狩完至(勝者:猪狩完至)

 改めて読むと猪狩イチイチわざとらしいですね。勝負もかなりあっさり着いてるし。

1回戦第4試合/本部以蔵VS金竜山(勝者:金竜山)

  力士って単純にデカいってだけで恐いです。本部、伝説とまで呼ばれた存在なのに、この漫画が始まって以来一度も勝ったコトないってのはどういうコトですか。

1回戦第5試合/セルゲイ・タクタロフVS烈海王(勝者:烈海王)

 転蓮華をかます時の烈の表情が信じられません。まだキャラが固まってなかったからこその顔です。烈の肉体を見て刃牙は「どう見えるかより どう造ったのかなんだけど......」と評していますが、もしかしたらこの段階では、ドーピングも烈属性のネタにしようとしていたのかも知れません。

1回戦第6試合/夜叉猿Jr.VS加藤清澄

 斗羽を除く2名のリザーバー及びラベルト・ゲランを屠っての夜叉猿Jr.乱入。この最大トーナメント、まず最初の嵐です。

 刃牙の言った「君のお父さんを殺したのは確かにオレだッ」、殺したのは勇次郎です。どういうコトでしょうか。『範馬が殺した』と広義に捕らえるべきなんでしょうか。それとも板垣氏が細かい部分忘れてたんでしょうか。ていうかこの猿たかだか4年で成長し過ぎ。


●23巻

番外戦/夜叉猿Jr.VS愚地克巳

 トドメを刺そうとした克己を止めに入る刃牙。この一瞬の攻防で克己の力を見せつけているんですが、これもまた後々凄いミスディレクションになるコトに。

「坊ちゃんカラテに見せてやるぜ 雑種のしたたかさってやつをな」と粋がっていた加藤が「この人はオレと違ってちゃんと上まで登ってくる人だ」と語ってるのが何だかもの悲しいです。

 んで、加藤とラベルト・ゲラン双方負傷欠場となり、リザーバーの斗場が2回戦で烈の相手に。ていうか加藤全然無事だと思うんですがもう面倒なので解説に回したんでしょうか。

1回戦第7試合/花山薫VS稲城文之信(勝者:花山)

 4年前に勇次郎に一蹴され第一線には戻れないと自ら語った花山の復活。キャラ立ってるし作者としても勿体なかったんでしょうかね。ていうか4年前にすでに復帰しててユリーと一緒に刃牙のスパーリング相手やってたか。

 んでこの第7試合、攻防は一瞬ながらもかなりイイ勝負だと思います。短い中で数回ひっくり返っているし。

1回戦第8試合/ローランド・イスタスVS愚地克巳(勝者:克巳)

 サブミッションのエキスパート/イスタス。ライオンへの関節技を決めるというとんでもないコトをした男。「KOF2001」のゼロのペットのライオンにも嫌われています(ていうかKOFの設定マニアック過ぎです)

 何気に克巳、イスタスの右目潰してるんですけど。酷くないですかコレ。勇次郎に右目を飛ばされた養父への花向け、なんでしょうか。


24巻

1回戦第9試合/李猛虎VSアイアン・マイケル(勝者:マイケル)

 ここで勇次郎が天内悠を引き連れて地下闘技場控え室に登場する為、やや喰われてしまった感のある試合。ボクシングとテコンドー、どちらもメジャーな格闘技ですが、ここで残ったのはボクサー。ボクシングよりテコンドーの方がむしろネタありそうなんですが。

1回戦第10試合/柴千春VS畑中公平(勝者:柴千春)

 暴走族として参加してる柴千春。世界中から強いヤツを集めてくるよう言われた光成配下、こいつを連れてきたヤツは一体何考えてたんでしょうか。柴のキャラ作りは石頭と根性。しかもそれで勝ったし。

1回戦第11試合/三崎健吾VSマイク・クイン(勝者:三崎)

 三崎健吾、烈とちょっとキャラ被ってます。かなり一方的に勝利してます。

インターバル

 次の試合を前に勇次郎が「優勝者は決まってるぜ 100パーセントな」と語っています。勇次郎が予想したのは42巻のセリフ「刃牙め 俺の予想を覆しやがった」からジャック・ハンマーであったと思われます。

 ただ、勇次郎がジャックに反応したのは彼の試合を見てからです。ぼそっと耳もとで何か囁かれ「そいつァ権利が 大ありだぜ」と勇次郎が答えています。ここで囁かれたのは自分がジェーンの子供だという内容だと思われます(39巻:THE FACT of BROTHERSより)。

 この囁かれた段階でなら勇次郎が「100%優勝はジャック」と考えても自然ですが、それよりも前の「第213話 不思議な男」で「優勝者は決まってるぜ 100パーセントな」とすでに出てるのは不自然。

 これは恐らく、213話の時点で作者はジャックを刃牙の兄と確定し(刃牙のジャックに対する謎のリアクションからそう読めます) 、勇次郎も控え室に入ったりした時などにジェーンの子供だと見抜いていたと設定。この段階ではそう設定。その後やはり伏線が足りないと感じて、215話でぼそっと囁くエピソードを加えた、のではないでしょうか。


25巻

1回戦第12試合/セルジオ・シルバVSジャック・ハンマー(勝者:ジャック)

 何でもアリなら最強と言われるブラジリアン柔術のシルバを文字通り一撃で倒したジャック。

 「グラップラー刃牙」では幼年期編ラスト(20巻)にてディクソン(実在最強と呼ばれるグレイシー柔術の使い手ヒクソンがモデル)が地下闘技場にて敗北してるコトが描かれています。この漫画では「実在最強の先」の格闘を創作しているコトになるんですが、このセルジオ・シルバVSジャック・ハンマーの一戦にはその再確認も含まれてる感じでしょうか。

1回戦第13試合/天内悠VS山本稔(勝者:天内)

 異様な滞空時間を利用した空中からの攻撃、そして板垣的には美形キャラ、そんなキャラ作りから天内はスト2のバルログがモデルなんじゃないかと思ったり。外見のモチーフは宝塚の人らしいんですが。範馬勇次郎推薦だけあって取り敢えずここでは圧勝を納めてます。

1回戦第14試合/リチャード・フィルスVS愚地独歩(勝者:独歩)

 勇次郎に心臓を止められ、ドクター紅葉に蘇生させられた独歩の復活試合。フィルスの「攻撃を避けない」ってのは花山の劣化コピーじみています。試合前に酒飲んでる辺りも。

1回戦第15試合/ロジャー・ハーロンVS渋川剛気(勝者:渋川)

 試合前と後で、アナウンサーの言ってる事がまるで正反対です。この試合では全然手の内を見せてないです、達人渋川。

1回戦第16試合/鎬紅葉VS鎬昂昇

 1回戦最後の試合は兄弟対決です。トーナメント表が発表される前に控え室で「君との立ち会いは私にとっては通過点に過ぎない」と以前の勝負(3巻)について刃牙に語っていた昂昇。しかしこの試合を前に、「試合を降りたいんだ」と兄に言っています。人を倒す一点に向けられてきた己の空手を実の兄に向ける事は出来ない。そして試合が開始。

弟、思いっきり兄の顔面に飛び蹴り入れました。

しかもすっげー嬉しそうな表情。その蹴りは効いてなかったんですが、更に紐切りを喰らわせて視神経切断、兄の右目の視力を奪ったトコロでこの巻は終了。


●26巻

1回戦第16試合/鎬紅葉VS鎬昂昇(勝者:昂昇)

 残された目の視神経も切断された兄紅葉ですが、両視力を奪われても自力でその場で手術をして視力を取り戻した紅葉。どうやって繋いだんでしょうか。こよりみたいに視神経繋いだんでしょうか。ビンタ一発で弟昂昇を追い詰めたものの、余計な一言で弟の闘争心に再び火がつきました。打震を喰らいながらも前進する弟を前に、兄、試合放棄。

 板垣氏が著作「グラップラー格闘士烈伝」で述べてるように、「弟の兄越え」「子の親越え」同様、人生の壁とも言える行為。絶大な父/勇次郎を刃牙が越えるってのが最終的にこの作品で描かれるであろう終着点でしょうが、その前に、兄を越えるというハードルをこの「最大トーナメント編」で設定した様です。この鎬紅葉VS鎬昂昇にはその先行的な意味合いも込められていそうです。

2回戦第1試合/範馬刃牙VSズール(勝者:刃牙)

 主人公の闘いは基本的につまらないんですが、そのカンフル的なエピソードが加えられるのがこの2回戦。

 試合開始前にも関わらずいきなりズールがラッシュをかけ、そのまま一気に「勝負あり」となります。刃牙敗北。開始前だったと観客がブーイングをかましますが、主催者徳川光成はこの闘いがスポーツ競技ではなく格闘技であるコト、過去の全世界空手道選手権大会を例に、刃牙の負けを言い渡します。そういえば勇次郎VS独歩でも独歩不意打ちしかけてました。

 が、ズールが自力で帰ろうとする刃牙に襲い掛かり勝負続行。今度は刃牙がダウンを奪います。そしてズールの手を握り、(これで1対1。3本目を始めよう)念を送ります。サルと心を通わせた程の男、刃牙です。言葉が通じない野蛮人のズールですが、まだ人間であるのでその念を受信しました。そして3本目は刃牙が取って試合終了。


●27巻

2回戦第2試合/猪狩完至VS金竜山(勝者:猪狩)

 妙にスピード感のある展開でした。序盤の金竜山の圧倒的な強さがとんでもない。このカードが1回戦だったらページの都合もあってそのまま決着が着いていたでしょう。金竜山の親方も観戦に登場したこのカード、キャラが負けられない状態になったら負ける、そんな板垣的構図が見えてきた感じもします。勝負後の猪狩の台詞、

「アンタの大銀杏決して無駄にはしねェ 俺が必ず優勝するッッ」

こんなコトを言い出したら負けが濃厚になりますこの漫画。

2回戦第3試合/烈海王VSマウント斗羽(勝者:烈)

 前の試合と異なり、プロレスが敗北。烈が余裕の勝利を収めます。猪狩が勝ち上がったコトだしプロレスネタ担当は一人で充分です。

 猪狩VS金竜山では、斗羽が猪狩の海外での呼称が『殺し屋(キラー)』だと語り、このカードでは逆に猪狩が斗羽のアメリカでの『ジャイアントデビル』という異名とヒールぶりについてを語ってます。レスラー、言う事みんな一緒。

2回戦第4試合/花山薫VS愚地克巳

 まだ2回戦でありながら、この勝負を最大トーナメントベストバウトに挙げる人も少なくないのがこの花山薫VS愚地克巳

 ケンカVSカラテ。暴力VS武力。アナウンサーも奇跡のようなカードが実現、と力込めてますが、1回戦の花山薫VS稲城文之信も対極構図は同じだと思うんですが。そこはやはり『空手を終わらせた男』と謳われた克巳だからでしょうか。


●28巻

2回戦第4試合/花山薫VS愚地克巳(勝者:克巳) 

 結果的に克巳が勝利を収めましたが、ここまで苦戦するとは思ってもいなかったカード。主人公に過去破れた強敵は、新キャラの強さを簡単/明確に読者に伝える為に瞬殺されるのが格闘漫画の常道。「グラップラー刃牙」でも幼年期編ではその傾向があったのですが、この「花山薫VS愚地克巳」辺りから漫画のお約束/パターンをも意外性(「予想は裏切る、期待は裏切らない」)を出す為に上手く利用するようになった感じです。

 この勝負は板垣氏が「格闘士烈伝」で書いている、アルティメット大会を観た時に受けた空手ボロ負けの衝撃が反映されていそうです。築きあげてきた空手の伝統/技術/方法論/ルール、それら全て、いざ何でもありの闘いの場を設けてみたら、死ぬ気でかかってくる相手にはロクに通用しなかったという。高等技術も何だか難易度が高いだけで、実戦には些末な技の扱いぐらい。

2回戦第5試合/アイアン・マイケルVS柴千春

 プロボクサーと珍走団という、最悪のカードです。柴は好き嫌いがはっきり分かれるキャラらしいんですが、僕は何かイヤですね(笑)。


29巻

2回戦第5試合/アイアン・マイケルVS柴千春(勝者:柴千春/しかし次の試合は戦闘不能と判定)

 相当変則的な試合内容になっています。石膏で殴り掛かる、足をさらしで繋ぐなどあからさまな反則を仕掛ける柴。しかし光成、これを「マイケルが一言でも抗議したら ただちに柴千春の反則負けを宣言しなさい」と言っただけで流しています。まあ、これは作者のストーリーの都合上で。

 過去にナナハンをぶつけられても五体満足だった柴。花山ほどではないにしろ、柴も「喧嘩の神」に愛されている感じです。努力で勝ち得た「頑丈さ」ではなく、生まれ持った「頑丈さ」に思えます。ヘヴィ級プロボクサーのパンチまともに喰らって立ち上がるにはそれぐらいのキャラにする必要もありそうですから。

 セコンドの乱入で、明らかにマイケル以上にダメージを負いつつも、勝利を宣告された柴千春。しかし、ダメージはどうしようもない程で、その枠を埋める為、ロシアからガーレンが登場。


30巻

2回戦第6試合/三崎健吾VSジャック・ハンマー(勝者:ジャック)

 巻の冒頭はロシアからの乱入者アレクサンダー・ガーレンの紹介。永久凍土にて、大型トラック2000台でも埋まらないクレーターを、2年とかからず一人で掘り起こした男。2000台とか2年とかからずとか具体的なコトが書かれていますが、この具体例、分かりやすいんだか分かりにくいんだか。スケールでかすぎて見当つかない。

 ジャックがガーレンに興味を示して、そして闘技場へ。この切り替え、今の「バキ」からは想像も付かない程テンポいいです。

 この試合でジャックのドーピングに次いでの属性、「噛み付き」が公開。余りのえげつなさにヒールキャラになってます。トドメは1回戦同様、アッパーで思いっきり相手を空中回転。


●31巻

2回戦第7試合/天内悠VS愚地独歩(勝者:愚地独歩)

 範馬勇次郎の推薦で飛び入り参加となった天内。勇次郎推薦ですよ、勇次郎。それ故、どんなに独歩が優勢に立とうが『何かある』と思ってしまうのが読者のサガ。独歩の奥さん/夏枝もまた独歩の圧倒的な姿を見ながらも、

「どうして......?」「あなたが勝つ姿が思い浮かばない」

と考えています。そして事実天内が逆転しますが、独歩の膝を破壊するもトドメを刺さず、負けを認めるよう懇願。そんな天内にトドメを刺したのが勇次郎。肩から心臓にかけて手刀を叩き込みました。これ、死んでるでしょ? 

 更にそこから始まる勇次郎の語りから察するに、天内は勇次郎イズムの反面教師として連れてこられたように思えてきます。当初から作者が天内をこういう扱いにするつもりだったのか疑問ですが、結果的に反面教師。

 そして勇次郎が勝ち残っている9人纏めて自分にぶつけろと豪語。連載時はせっかくここまで大会しっかり描いてきたのにここで勇次郎にグダグダにされるのかと焦ったものです。


32巻

 蛮勇を振るう勇次郎を止める為に、麻酔銃が使用されます。勇次郎が銃ごときで止められるワケはないんですが、大会を続行させるにはどうにか退場させなければならない。

 「予測もしなかったぜ---!!」「こんな場所で銃とは......ッッッ」なんて無理矢理勇次郎の心理描写がありますが、これは『勇次郎でも油断するんだ』というコトに繋がり、今となっては作者も後悔してそうなエピソードだと思います。

2回戦第8試合/渋川剛気VS鎬昂昇(勝者:渋川剛気)

 兄/鎬紅葉とあれだけ逆転に次ぐ逆転の勝負を繰り広げて2回戦に勝ち上がってきた昂昇ですが、あっさり敗北。新紐切り/眼底砕きも通用せず、達人渋川の圧勝。

 そして3回戦(準々決勝)へと突入しますが、この3回戦4試合、それぞれどの勝負もその辺の格闘漫画の決勝戦にも匹敵する密度を誇っています。


●33巻

3回戦第1試合/範馬刃牙VS猪狩完至(勝者:刃牙)

 「相手の技は全て受ける」、これで板垣なりのプロレス観は描き切ってるんじゃないかと思われます。そして、「結構身体が硬い」、これで板垣なりのレスラー観は描き切ってるんじゃないかと思われます。

 メンタルな部分に訴える「人間力」ってのは猪狩独特の属性で、別にプロレスとは関係なし。準々決勝でこういうドンパチオンリーでない変化球気味の勝負を持ってきていますが、刃牙は主人公なので(=読者は勝つと思ってる)、作者的にも扱いが難しそうです。

 そして最後は次の勝負に挑む2名、烈海王と愚地克巳両名に関するエピソード。

 中国拳法の神秘性が描かれると共に、巨大な黒曜石を己の五体のみで球体に削り上げた烈。「魔拳」などと言う邪悪さを感じさせる呼称も付けられています。劉海王は「拳神」となっています。こうなると海王ドリアンの肩書きが気になるトコロ。

 一方の克巳は、5歳時にサーカスの看板スターだったらしいコトが判明。5歳の子供に空中ブランコをやらせるサーカスもどうかと思いますが。「父を運び出して下さい」「はやく......」は泣けます。自信家の克巳の、過去のピュアな表情にファン急増。多分。


●34巻

3回戦第2試合/烈海王V愚地克巳(勝者:烈)

 仕込みに仕込んだシコミが炸裂。この最大トーナメント中、最も意表を衝かれた展開。近代空手と古代中国拳法の勝負は、一撃で決着。マッハ突きをカウンターで切り落としての烈勝利。

「これほどのものか中国拳法ォッ!!」
「これほどの差を誰が予測し得ましょうッッ」

作中に鏤められたこれらの台詞から、板垣の『どうだ驚いたろう、こう来るとは思っていなかったろう』というニヤついた顔が思い浮かびます。ホントこの企みにはやられた感じ。

3回戦第3試合/アレクサンダー・ガーレンVSジャック・ハンマー

 前哨戦としてガーレンとアナコンダの勝負が描かれます。大蛇に睨まれてどうしようかという夢を見たコトのある自分としては、充分ガーレンのとんでもなさが分かります。夢でも恐かったですから。

 試合前半はとにかくガーレンが投げまくっています。ジャック、ヤバい落下の仕方してます(P131の最後のコマ)。巻の最後では、ジャックがマックシング出掛かりの顔になったトコロで終了。カラータイマーみたいなもんでしょうか。


●35巻

3回戦第3試合/アレクサンダー・ガーレンVSジャック・ハンマー(勝者:ジャック)

 ジャックハンマーの強靱な肉体を造り出した過去が明らかに。常識を超える。科学的なトレーニングを一蹴し、間違ってると称されるオーバーワークを繰り返すジャック。そして死をも厭わぬ目的意識を持つ彼に、理想のパートナー/ジョンの登場。薬品による人体改良を試みるマッド・サイエンティストです。

 ジョンの超人製造の夢が始まったのは、実は勇次郎が北極熊を肉体のみの力で屠ふる様を見て以来。ジャックといううってつけの材料を得てその実験成果を嬉々として見守り続けていましたが、ジャックの暴走に途中で逆に恐ろしくなったらしい。ジャックもまた勇次郎同様北極熊を倒してるコトが判明。この段階ではジャックと勇次郎の強さの差が見えない感じ。むしろジャックの倒していた熊の方がデカそうです。

 試合は、ガーレンの十八番たる投げを切り返しての投げ、そこからのラッシュでジャック勝利。

 前巻ラストの刃牙の台詞「ここで死ぬ気だな ジャック」、そして『過去シーンが判明したら負ける』というこの大会の裏セオリーを破っての勝利です。

3回戦第4試合/愚地独歩VS渋川剛気

 これも名勝負にあげる人の多い一戦です。達人渋川の代名詞とも言われる合気が初公開。あらゆる攻撃を相手に返す「最強の盾」。格ゲーでは「当て身投げ」と間違った呼称で流布している技です。1〜2回戦では隠していたんですね。

 そして独歩もまた本当の正拳、通称「菩薩拳」で反撃。無心ゆえ合気でも拾えない「最強の矛」です。


●36巻

3回戦第4試合/愚地独歩VS渋川剛気(勝者:渋川) 

 最強の矛「菩薩拳」VS最強の盾「合気」は渋川の勝利にて終了。殺意/敵意を持たない攻撃をどう捕らえたか。

 明確な説明はないんですが、幼年期刃牙のように、攻撃が接触してからのカウンター(合気)合わせ、のように見えます。合気で返してはいるけど、今までのように事前に敵意を拾って合わせたのではない感じ。臨機応変にその場で思いついての合気使用法に思います。

 これで準決勝進出の4名が決定。

 烈戦を前に何故か血まみれになってる刃牙。そして烈に向かって「強烈だったよ...中国4000年...」「この勝負」「勝ったのは俺だ」意味不明な過去形を使用。主人公の戦いは準決勝までもが変格モードになりそうです。


●37巻

準決勝第1試合/範馬刃牙VS烈海王

 「勝ったのはオレだ」。刃牙が試合前に放った謎の発言の意味が、この烈戦を通して明かされます。

 リアルシャドー。火バシの熱さを知った幼児にふざけて冷たい火バシを触れさせると、火傷をしたと勘違いした幼児はリアルに苦痛を感じる。時には実際に火ぶくれが生じるコトもある。刃牙はこの原理から、この準決勝前に、今まで見た烈の闘う姿をイメージして烈と闘っていた(リハーサル)。そして勝利を収めていた、との説明。

 ただ、この『思い込みは実現する(自己暗示)』で、火傷が生じるコトはあっても出血を伴う傷が出来るコトはないと以前「特命リサーチ」でやってました。まあ、グラップラー刃牙はファンタジーってコトで。ほら夜叉猿とか。

 この巻は全体的に肉体の部分的なアップの描写が丹念に描かれています。特に烈の足の指ですかね。

 ラストは烈からへそ突きを喰らった刃牙のガラが悪くなって終了。このへそ突きはかなり痛そうです。人さし指が根元まで突き刺さってます。


●38巻

準決勝第1試合/範馬刃牙VS烈海王(勝者:刃牙)

 烈の猛攻に、刃牙の中に眠る「巨凶・範馬の血」が目覚めました。烈の肩に飛び乗り、烈の顎と三つ編みを掴んでビキビキと首をねじ曲げました。このシーンはヤバ過ぎです。しかも烈、首をぶらんぶらんさせながらも踏み止まり、頭に手をやりゴキゴキとはめ直しました。首を捻られる瞬間、自分で頸骨を外していた、とのコトですが、中国4000年なんでもありですか。

 最後は烈のラッシュをかわし切り、回し蹴りをぶちかまして刃牙勝利。ギリギリで烈の見せた親指の爪での斬撃、これはちょっと烈をチープにしちゃいました。

準決勝第2試合/ジャック・ハンマーVS渋川剛気(勝者:ジャック)

 試合開始直前に水を口に含んでいた達人渋川は、「バキ」6巻の独歩が語る格闘家の美学に反しているように思えます。

 渋川のアキレス腱を噛み切ったジャック。そういやアキレス腱、喰いちぎられていたんだよなあ。今(「バキ」)の達人見てて忘れていました。

 この闘い一番の見どころは『合気が如何にして破れるか』。ジャックがとったのは、スローモーションのようにゆっくりと渋川を捕らえようとする。打撃力を伴わない掴み/締め狙いです。思わずジャックの手につかみ掛かる達人にアッパー2発。顎ぐしゃぐしゃのじゃりじゃりです。

 最後は渋川の十八番たる足払い大回転を喰らわせ、ジャック勝利。ガーレン戦(投げ)同様、相手のオハコでフィニッシュに持ち込むジャックです。


●39巻

 まずは決勝を前にして、勝ち上がってきた二人の試合前の様子/対象性が描写されています。

 ジャック・ハンマーはこれまで毎回試合前にドーピングをしてきましたが、この決勝に向けて飲んでいる薬物は、かつて北極熊を葬る際に摂取していたものと同じ薬。一方の刃牙は大量に飯を喰らった後、梢江の膝枕で眠っています。

 今日強くなれるなら明日はいらないジャック。より一層明日強くなるように思い続けて今日に辿り着いた刃牙。この二人による地下最大トーナメント決勝戦です。

決勝戦/範馬刃牙VSジャック・ハンマー

 ジャック入場の際、そのガウンの背に浮かぶ『JACK範馬』の文字。ジャックが勇次郎の血を引く者、刃牙の兄であるコトが観客の元にも明らかにされます。連載時にはこれ(兄)はかなり早いうちから多くの読者にモロバレだったように思います。だから「ジャックVS達人渋川」は、勝敗については意外性ゼロでした。

 んで、試合開始と同時に強烈な打撃戦。見開き、何度使ってるコトやら。しかもこれは準備運動です。ドラゴンボールで言えばまだ重たい胴着のまま闘っていた状態。


●40巻

 表紙での巻数40の位置がこうするしかなかったのかと思える場所に。表紙イラスト、絶叫する刃牙のアップなんですが、大きく開けた口に「40」。ああ、でもレイアウト考えたらここしかないか。

シークレットウォー・イン・ベトナム

 この巻ではジャックの母/ジェーンと勇次郎が出会った過去が描かれています。大会決勝のかなりいいトコロでこの回想(?)に突入したので連載時はちょっとウザかったです。

 ベトナム戦争時における勇次郎の活躍が全編描かれています。ジェーンと勇次郎の出会い、と書きましたが、はっきり言ってこの過去編は勇次郎の強さを再確認するだけです。強いのなんの。途中でサム・ゲーリー准将の皮を被ってるのは「羊たちの沈黙」でしょうね。

 勇次郎とストライダムのファーストコンタクトもありますが、ただ出会っただけです。作者がストライダムを出してみたかったので出しただけにしか思えないチョイ出演で終わり。


●41巻

決勝戦/範馬刃牙VSジャック・ハンマー

 9週分の「シークレットウォー・イン・ベトナム」も終わりようやく決勝の続き。

 ジャックは必殺の噛み付きを連発し、刃牙はそれを躱す。この辺ではジャックの口の中から刃牙を映すアングルなどがあり、革新的です。歯の裏しっかり描いてるし。

 喰らえば確実に致命傷、一撃必殺の噛み付きです。喰らうワケにはいきません。喰らいましたが。右腕上腕動脈を噛み千切られました。それでも刃牙は闘うのを止めません。刃牙がエンドルフィンを出してからの両者の絶技撩乱が凄い。転蓮華/渋川流/紐切り/音速拳、今まで大会参加者が見せた必殺技が息つく間もなく放たれます。

 紐切りで、視神経に引っ掛けてる指が翌号で逆の手になってるのも思わず見逃すほどのハイテンションな展開です。

 ドーピングに次ぐドーピングでマックシング突入のジャックが大絶叫した後、おもむろに刃牙に物凄い右をヒットさせて次巻へ。


●42巻

決勝戦/範馬刃牙VSジャック・ハンマー(勝者:範馬刃牙)

 決勝戦終盤にて、優勢に闘いを進めていたジャックの肉体に異変。マックシングの果てにゲロり放題。ガリガリに痩せこけます。そして何よりも凄いのが、このガリガリ状態こそがジャック完全体とも言っていい姿だったコト。ドーピングはいけません的な社会派倫理派な展開を思わせてのこのストーリー運びが素敵です。

「日に30時間の鍛練という矛盾のみを条件に存在する肉体」

この台詞が超カッコイイ。言ってるコトは「一週間に十日来い♪」なんですが、シチュエーション次第でとてもカッコよくなります。

 そして刃牙の最後の強烈な反撃、フロントネック。刃牙の背中に勇次郎の象徴とも言える「鬼の貌」が浮かびました。ここで歯を食いしばって耐えるジャックのモノローグが印象的です。 

「あと30秒...?」「あと20秒耐えたら俺の勝ちだッッ」

今しか認めないジャックが、たとえ数十秒とは言え未来を考えたコト。心(思想)の敗北と勝負の敗北が重なっての完璧な決着に思えます。

番外戦/ジャック・ハンマーVS範馬勇次郎(勝者:勇次郎)

 決勝を終えたジャックが向かったのは東京ドーム駐車場。ここで待っていた勇次郎との闘いが描かれますが、1週分で勇次郎勝利。てめえの息子の頸動脈を噛み切る勇次郎が半端じゃない。刃牙が勇次郎に勝つ姿が浮かびません。


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