歌野晶午


●「安達ヶ原の鬼密室」(講談社ノベルス)

兵吾少年は奇妙な枡形の屋敷に住む老婆に助けられた。その夜、少年は窓から忍び込もうとする鬼に出くわす。次々と起きる奇怪な事件。虎の彫像の口にくわえられた死体や、武者像の弓矢の先にぶら下げられた死体が発見される。真相は五十年の時を経て、「推理嫌いの探偵」の手により明らかとなる!

 最初、いきなりひらがなだらけのほのぼのした物語が始まり面喰らいます。それが中断され、いよいよ鬼密室か、と気を引き締めると、舞台はアメリカ、フットボール試合中継に移ります。そして留学生ナオミが、街に起こる連続切り裂き魔事件に巻き込まれます。

鬼密室、全く出てきません。

んで、このアメリカのパートが中断されようやく「安達ヶ原の鬼密室」のメインが始まります。どこまでも構成が見えない不安感が付きまとう作品です。この3つの無関係に見える事件がどう纏まるのか、話の最大公約数はどこに仕掛けられているのかが読み進めてる途中でも気になって頭から離れません。更にこのメインパートでも途中で過去の事件の回想に突入します。

 読了後の感想としては、原点回帰した印象を受けた作品です。初期の信濃シリーズあたり、ですか。島田荘司作品を思わせる「起こちゃったんだから仕方ない」型です。最近の1作毎に趣向を凝らしてる歌野作品が好きなので、今回はちょっと肩透かし。この構成が辛うじて変わった趣向ですが。

(20020119)


「館という名の楽園で」(祥伝社文庫)

「奇妙な事件は、奇妙な構造の館で起こるのが定説です」三星館と名づけられた西洋館の主は、四人の招待客にある提案をした。それぞれが殺人者、被害者、探偵役になって行なう〈殺人トリック・ゲーム〉である。そして今、百数十年前にイギリスで起こった事件が再現される! 時空を超えて幽霊のごとく立ち現われる奇怪な現象、謎、さらに最後の惨劇とは?

 歌野晶午って何となく冨樫義博に似てませんか? 作風とかじゃなく、顔が。似てませんか。別にどうでもいいんですけど。

 そんなコトを書くぐらいネタがありません。非常にオーソドックスな内容です。400円文庫なりのオチです。大掛かりなのでモロバレという感じでしょうか。もっとスマートに纏まると思ったのがちょっとガツガツしてたというぐらいで、メインのオチは殆どの読者が序盤で予想がつきそうです。

 いやスマートなオチと思わせてそこまでスマートでないのが引っ掛けです、なんてコトは言わないでしょう歌野晶午は。これがプライドの権化こと清涼院流水ならそんなコト言い出します。だからぶっ殺したい気分になります。

 状況を把握してガチャガチャした計算をするコトなく、何となくメインオチ分かります。

 この計算させる部分(時間やら人物配置など)が何と言うか、勿体ない感じですね。はっきり言って逐一把握しながら読む読者は少なそうです。それでいてキッチリ堅実に作り込む作者は、プロですな。

(20021120)


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