谷甲州


●「エリコ」(上・下/ハヤカワ文庫)

二二世紀。無国籍都市・大坂。美貌の高級娼婦、北沢エリコは、大坂府警の刑事から、中国系マフィア、黒幇(フェイパン)が運営する売春組織への囮捜査を強要されたが、それが原因で、府警と黒幇双方から追われることになり、いつしか奇怪な陰謀の渦に巻きこまれていく。遺伝子工学、生物工学の先端技術による改造人間やクローン、疑似人格までが入り乱れ、謎が謎を呼び、猥雑と戦慄がからみあう、嗜虐と倒錯の近未来サスペンス。

 サイバーパンクな雰囲気たっぷりで、話もグイグイ転がっていくタイプのSFですが、全体的にちょいとパンチが弱いかなあ。75点アベレージで最後まで突っ走る感じで、50点に落ちないかわりに90点に跳ね上がる瞬間もないような。ゴテゴテのSFと並列して読んでたからそう感じたのかも知れない。

 上巻では上海での黒幇との関わりが中心で、下巻では弘田という男が話に深く関わってきて最終的にはFF4よろしく月まで舞台は広がります。舞台が月になってもストーリーに破綻はなく雰囲気も壊れないんですが、それ故にわざわざ月に行くまでもないだろ的違和感を感じます。

 あとがきや解説によると、発表時にはセクシャルな描写が波紋を呼んだようなコトが書かれています。確かに(上海マフィアらしい)性的な拷問などの描写が結構あります。ロバとか。あの、ロバとかね。でもその辺はそれほどにも感じなかったなあ。恐らく、僕が普段考えてるコトが遥かに異常だからだと思われます。小生、火田七瀬の天敵でございます。

 作中に出てくる性的な描写にも色々あるのですが、性を欲のみではなく、愛の観点から捉えてる感じのものが多いです。バキ雄全開編のような意図での性描写です。

(20021112)


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