田中芳樹


「マヴァール年代記」(角川文庫)

第一部 氷の玉座/第二部 雪の帝冠/第三部 炎の凱歌 以上全3冊

 実家に「アルスラーン戦記」と並んで置いてあったんですが、こちらを読みました。「アルスラーン戦記」は僕きっと一生読まないでしょう。理由は完結してないし、恐らくこれからも完結しないだろうから。僕が読んだのは角川文庫版ですが、この「マヴァール年代記」は創元推理文庫で合本全1冊バージョンが出ています。

 完結してる(もしくはする見込みがある)かどうかは、自分の中でかなり重要なポイントかも。田中芳樹作品の長編シリーズはほとんどが放置プレイ入ってるんですが、この「マヴァール年代記」は奇跡的に完結している一つです。

 内容は、氷雪の帝国/マヴァール帝国を舞台に展開される、陰謀/野心/戦乱の物語。ファンタジーの世界を創り込んで、戦争を主題に展開される作品です。架空の世界/歴史の設定が緻密ながらも物語の流れを殺してない。設定は掘り下げればもっと長く出来たでしょうが、主題を戦争に置きそちらを前面に押し出してるのが作品のカラーを明確にしています。むしろ設定を過剰に掘り下げないコトが、一見書き込みの薄い世界観背景をあれこれ想像させ、深みを出す結果にもなってます。

 登場人物はかなり大量に出てきますが、正直「駒」的要素が強く、特定人物以外はモロ捨てキャラです。登場人物の個人史や個性付けはステロタイプながらも当然あるのですが、やはりこの作品の『主役』は戦争(陰謀劇と兵法)にあります。戦記モノというジャンル自体をロクに読まない自分なので、その辺は新鮮でした。野心を秘めた策士の戦術のぶつかり合いってだけでもう好み。

 戦記モノというジャンルは全て「三国志」をベースにしてるようかに映るのですが、「三国志」はごった煮のエンターテインメントです。キャラ/歴史/兵法など、どこを読むか読み手の自由度が高いのですが、それ故に、面白さ/味わいに個人差が出るので、語ったり勧めたりする判断が意外とツラい作品だったりします。その点この「マヴァール年代記」は陰謀劇/戦闘が核となってるので、そこに面白さを見い出す人には文句なく勧められると言えよう。あ、何か偉そうですみません。特に、「三国志」挫折してるクセに引き合いに出してる辺りが。

 それにしてもホントどうしてあの田中芳樹がこれを完結させれたのか不思議。他の未完結作品って各キャラ毎に人気が出て、作者として動かし(殺し)にくくなってしまうのだろうか。「○○萌え〜!!」なんてファンレターが殺到する前に一気に書き上げるコトが出来たのかな。萌えなんて言葉当時なかっただろうけど。アンジェリナ萌え〜!

(20030214)


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