田中光二


●「わが赴くは蒼き大地」(ハルキ文庫)

二二〇五年、地球は突如、宇宙から、“敵”の襲撃を受けた。地上の人類は死に絶え、残されたのは、海中都市に住む人々だけだった。海底の彼らにも侵略の手が近づく中、“敵”がインフルエンザヴィルスに抵抗力のないことが判明する。ヴィルスの増殖設備を持つバハマ・シティへサンプルを届けるべく水中歩兵部隊員・チヒロは、精神感応術者・ジャンとともに深海の決死行へと赴くのだが......。

 チヒロとジャン、そして二人が任務遂行の為に乗り込むノーチラス十世の頭脳/ラルフの会話を交え、深海を舞台に展開するSF。海は未だ謎多き領域としてフィクションの題材におあつらえなトコロがあるのかな。

 中盤までは非常にオーソドックスな「トラブル発生→解決」の積み重ねが続くのですが、第三部に入ってから意外な方向に話が進み、予想もつかないトコロに着地します。充分あり得る展開ながらも、それまでがそれまでだったのでこの価値観のシフトにはちょっと戸惑いました。なんと言うか、嘗めてましたスミマセン。

 二部でクライマックス感を出してから更にこう続くか、と。今日日の作品なら珍しくないんですが、30年も昔の作品です。当時の読者はもっと驚いたんじゃないかと思いました。

(20020927)


「異星の人」(ハルキ文庫)

ドラゴン・トレイル/怒りの谷/白き神々の座にて/大いなる珊瑚礁の果てに/許されざる者/わが谷は緑なりしか/汝が魂を翼にゆだねよ/世界樹の高みに 以上8編収録

 最初長編だと思いながら読み始めたら連作集でした。勝手に騙された気分。

 各短編に共通して登場するのがジョン・エナリー(異星人)。しかし主人公は別にいて、ジョン・エナリーは物語に関わりながらも、あくまでその別の主人公の事件が描かれます。

 主人公の一人称で進み、奇妙な男/エナリーの存在をどう感じるかが描かれているのですが、実は作中ではエナリーが主人公を観察している立場にあります。エナリーは傍観者で各主人公(地球人)の生き方を覗いています。この辺作者上手いです。

 異星人と言う視点を入れて、人間の常識となってる感情/文化/倫理感/正義を改めてまっさらな目で捉え直している感じでしょうか。エナリーの存在がなければ極々普通の文学小説ですが、エナリーがいなければこの視点を読者は意識しない。この辺作者上手いです。

 欠点を言うならエナリーという音からえなりかずきを連想するあたりでしょうかね。いま物凄い勝手なコト言った。

(20020927)


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