江戸川乱歩


●孤島の鬼(創元推理文庫)

密室状態での身寄り頼りのない恋人の死に始まり、その調査を依頼した素人探偵深山木幸吉まで、衆人環視のもとで殺された蓑浦は、彼に不思議な友情を捧げる親友諸戸とともに、事件の真相を追って南紀の孤島へ向かうことになった。だがそこで二人を待っていたのは、言語に絶する地獄図の世界であった......!

 自注自解に於ける自作への異様な評価の低さ、自信のなさっぷりが激しい乱歩ですが、劣等感にも通じるその乱歩の人間性がどこからくるのか、山田風太郎はエッセイでこう推理していました。

「若ハゲを気にしていたんではないだろうか」

 えー、失礼なコト書いてます。さすが山風です。ちょっと確認していないんですが、このエッセイってちゃんと乱歩が死んでから書いてたのでしょうか。しかも、「年をとるとその卑屈さが薄れ明るくなってきた。これはハゲててもおかしくない年齢になったためそれを劣等感と感じなくなったからではないだろうか」という内容も記されていて、とても説得力があります。

 それはさておき、「孤島の鬼」。乱歩作品でベストに推されるコトが多いのがこの「孤島の鬼」ですが、僕もこの作品が最も好きです。自注自解が厳しい乱歩なのに、「孤島の鬼」に関しては別にこれはダメだイマイチだなんて自罰モードにも入っていません。

 読了したのは夜中だったのですが、大の大人が消灯するのが出来なくなった程の恐怖を喰らいました。この恐怖は何なのかと考えたのですが、目下の結論として『正常じゃない人生を強制させられるコト』、この辺だと思います。もっと適切な言葉があるかと思いますが今はこれが精一杯。

 序盤で一応物理トリックを用いた謎解きパートがありますが、手記のスタイルをとる中盤部分が極上の恐怖。探偵小説ですが、むしろこの背徳を真正面から喰らいやがれ小説。軽く叙述トリック的なトコロですね。全然油断して読んでいたので不意打ちもいいところでした。オススメです。

(20011222)


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