西澤保彦


●「ナイフが町に降ってくる」(祥伝社NONNOVEL)

〈謎が解けなければ時間は永遠に止まったままだ〉何かに疑問を抱くと時が停止するという奇癖を持つ青年末統一郎の言葉に、女子高生真奈は逆上した。二人以外のすべての人間、物体は静止状態(ストップモーション)。そして謎とは、眼前でナイフを腹に突き立てて固まってる男。誰が、いつ犯行を? だが真相を探る二人は、町中でナイフの犠牲者を次々に発見。ナイフの雨が町を襲った? 迷宮に陥ちた二人。はたして“時間牢”から脱出できるか...。

 西澤保彦作品に多くみられるのが特殊設定を丸ごとつくり出し、「さてこのルールの中で色々と可能性を考えてみよう」という超能力モノなんですが、この作品もその形式です。

 麻耶雄嵩が「ユリイカ1999年12月号」で語ってますが、十戒を知ってる事を前提としてる海外作品があり、向こうでは常識でも日本では十戒に対してなじみが薄いのでそれが謎解きに必要なポジションとなってるのはアンフェアな作品にもなり得る。そしてこのコトは逆の見方をすれば、

「本格の論理が常識を前提とすることで前提の掲示を省略してること、逆にあらかじめ提示しておけば、どんなにいかがわしい非科学的な前提であろうともそれを使って謎を解くことは本格上何も問題ない」

そんな考えが出てくると述べてます。一連の西澤SF装置型本格推理はこれに該当しますね。ノンシリーズ作品なら尚のコト、各作品毎にルール設定が最初に説明されるので問題無し。そのルールの中で、あらゆる可能性が考察されるってのが、何気にアシモフの「黒後家蜘蛛の会」を彷佛させます。作品途中の間違った推理でも面白いのがポイント。

 この作品でも、「時間牢」という特殊能力が発動した世界で、末統一郎と真奈のコンビによる推理合戦が楽しめます。最終的な解決も、1作で1ルールを使い切るに相応しいものでした。

(20010612tue)


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