近藤史恵


「アンハッピードッグズ」(中公文庫)

最初に人を好きになったときから、わたしは失う予感におびえている。どんなに言葉と約束を重ねても、その予感はなくならない。でも、苦い思いを積み重ねた先には、新しい風景が広がっているのかもしれない---。

 この作品はミステリ的な側面はまるで何もありませんでした。恋愛小説です。ミステリと恋愛小説、二つの要素を扱っている作家といえば連城三紀彦で、その辺の比較から二人を語ってるのが「凍える島」での鷹城宏の解説です。これはとても適切な捉え方をしてて理解が深まりました。その部分の概略は以下。

連城三紀彦は恋愛小説の枠組みの中でミステリを書いている。
近藤史恵はミステリの枠組みの中で恋愛小説を書いている。

 というワケで、近藤史恵作品のキモは恋愛部分と捉えると納得が行きます。ミステリ作家としてデビューしたけど、この作品は既にミステリの枠もなくなってる恋愛小説という感じでした。

(20030112)


「凍える島」(創元推理文庫)

無人島とはこれまた古風な---とは言い条、お得意ぐるみ慰安旅行としゃれこんだ喫茶店<北斎屋>の一行は、瀬戸内海の真ん中に浮かぶS島へ。数年前には新興宗教の聖地だったという島で、八人の男女が一週間を共にする、しかも波瀾含みのメンバー構成。古式に倣って真夏の孤島に悲劇が幕を開け、ひとり減り、ふたり減り......。
由緒正しい主題をモダンに演出する物語はどこへ行く?

 近藤史恵のデビュー作です。

 あやめという女性の語りで物語が進行するのですが、このあやめが読んでてえらくムカつきます。何かこう、自己弁護めいてるわ、自分は傷つきやすいデリケートな女なんですオーラがプンプンするわ、あたしの繊細な心は凡人には理解できないのよ臭が漂うわで、最悪です。

 あまりにムカつくので、どうかコイツが犯人でありますようにと願いながら読み進めました。最低のミステリ読書方法です。

 このムカつく主人公、作者の人格が投影されてるのか、それとも確信犯なのか、この作品で初めて近藤史恵に接した読者なら見極めが難しいと思います。僕は別の作品(アンハッピードッグズ)を事前に読んでいたけど、それでもどちらなのか分からなかったです。

 一応の実行犯が明かされてからの、余情部分(動悸含む)が恋愛小説のノリになってます。犯行に至ったのは凄く個人的な行動原理ですが、物語としての膨らませと見れば別に問題ありません。実行犯が明らかになるトコロまでで、例え行動原理は分からなくても物的証拠(伏線)から犯人が割り出せる、つまりミステリとしての体裁は整っています。

(20030112)


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