古処誠二


●「UNKNOWN」(講談社ノベルス)

侵入不可能なはずの部屋の中に何故か盗聴器が仕掛けられた。密室の謎に挑むのは防諜のエキスパート・防衛部調査班の朝香ニ尉。犯人の残した微かな痕跡から、朝香は事件の全容を描き出す。

 第14回メフィスト賞受賞作。メフィスト賞はイロモノ/ゲテモノの代名詞なんですが、どうしてこんな極々ノーマルな作品が選ばれたのでしょうか。座談会で選考人が「どうしてメフィスト賞に応募したのか分からない」と論じてた作品があったけど、確かこれのコトだったような気がする。

 読後の印象としては、とにかく僕が今まで読んできた中で平均的/標準的なミステリという印象。インパクトは別にない。才能のある人がさらりと書いたような手際の良さも感じるし、悪く言えば量産型作家の1作という感じも受けましたが。悪く言うな。

 この人に関しては01年の12月31日の雑記で僕こんなコトを書いていました。

>最近気になるのが古処誠二作品。「2002本格ミステリ・ベスト10」の読者投票ランキングでの読者コメント、
「どの作品にも『動機』に意味を持たせてある。謎解きの面白さだけで終わらせない作者の非凡な才能を感じます」
これで興味を持ちました。動機ってのは純粋に謎を解くのみなら不要な要素だと思っているので、その部分がしっかり書かれてるってのはストーリーも重視してそうです。

 んで、この辺はどうだったかと言えば、確かに謎解きとストーリーの両輪がしっかりしてる作品でした。

 舞台は自衛隊。ホームズに朝香ニ尉、ワトソンに野上三曹。探偵資質ってのは同じモノを同じように五感で受信しても人よりも多くの情報を吸収するってコトだと考えれば、探偵はどこにでもいるもんだな、と思います。自衛隊ならではの問題や閉鎖世界のアレコレも、ちょっぴり衒学チックに、でもうるさくならない程度に描写されています。

(20020920)


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