貴志祐介


「十三番目の人格-ISOLA-」(角川ホラー文庫)

賀茂由香里は、人の強い感情を読みとることができるエンパスだった。その能力を活かして阪神大震災後、ボランティアで被災者の心のケアをしていた彼女は、西宮の病院に長期入院中の森谷千尋という少女に会う。由香里は、千尋の中に複数の人格が同居しているのを目のあたりにする。このあどけない少女が多重人格障害であることに胸を痛めつつ、しだいにうちとけて幾つかの人格と言葉を交わす由香里。だがやがて、十三番目の人格<ISOLA>の出現に、彼女は身も凍る思いがした。

 「多重人格探偵サイコ」をSF化させたコトで有名な作品です。大塚、これをパクるのはどうか。せっかくサイコサスペンスの様相を維持していた「多重人格探偵サイコ」なのに。

 この「十三番目の人格」は映画化されましたが、僕観たっけなあ? 劇場では観てませんが、テレビでやってたら観てる可能性がある。何か映像が浮かぶので。でも読みながら映像を勝手に浮かべていたのかも知れないし。記憶が曖昧です。ていうかそれほど映像化向けの作品だったというコトです。

 貴志祐介のデビュー作で、この人はリーダビリティの高い、非常に読みやすい文章を書く人です。井上夢人なんかと同様に。このデビュー作に関しては、とある一つの言葉/単語の意味がギミックになっているんですが、特にそれだけが取り柄でないのは後続の作品が証明しています。

(20030114)


「クリムゾンの迷宮」(角川ホラー文庫)

藤本芳彦は、この世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を、深紅色に濡れ光る奇岩の連なりが覆っている。ここはどこなんだ? 傍らに置かれた携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された......」それは、血で血を洗う凄惨なゼロサム・ゲームの始まりだった。

 ラストが尻切れな感じで物足りないなあと思ったのですが、これはこれでイイかな。ページを繰らせる作家という部分は梅原克文とも共通します。この作品は読感もちょっと近いかも。

 いきなりワケも分からずゲームに参加させられるという主人公の視点で語られる物語です。何も知らないのは読者も同じなので、一体どうなるのかと思いっきり引き込まれます。ゲームのルール説明も人を小馬鹿にしてて楽しいです。

(20030114)


「天使の囀り」(角川ホラー文庫)

北島早苗は、ホスピスで終末期医療に携わる精神科医。恋人で作家の高梨は、病的な死恐怖症(タナトフォビア)だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは、人格が異様な変容を見せ、あれほど恐れていた『死』に魅せられたように自殺してしまう。さらに、調査隊の他のメンバーも、次々と異常な方法で自殺を遂げてることがわかる。アマゾンで、いったい何が起きたのか? 高梨が死の直前に残した「天使の囀りが聞こえる」という言葉は、何を意味するのか?

 科学的な知識をベースに我流のアイデアを加えて飛翔するという、「パラサイト・イヴ」あたりから出てきた傾向のホラーです。つまり、大森望がSFにしたがる感じの作品です。この疑似科学的な説明付けがなければ昔からよくあるゴシックホラーなんですが、知識がベースアップした現代人にはある程度の裏付けがあるほうが恐怖を感じるコトが出来そうです。

 P406〜414にかけての庭永の演説が非常に説得力を持ってます。終盤でスチャラカな展開を見せるのですが、そうしなければこの庭永の説得力ありまくりの言葉を覆せないからでしょうか。

 作中でネットジャンキーの青年が、エロゲーにハマるコトでネット中毒から脱出したという描写があります。それもどうかと思うのですが、ネットやり過ぎの自分としては参考にしたいですね。ただ、Macだとエロゲー出来ないんですよね。困った(困るな)。

(20030114)


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