菊池聡


●「超常現象の心理学 人はなぜオカルトにひかれるのか」(平凡社新書)

「白いカラスはこの世に存在しない」という命題は証明できない。一万羽のカラスを調べて白いカラスがいなかったことを証明しても、一万一羽目が白いかも知れない。日本中のカラスを調べたとしても、アメリカにはいるかも知れない。世界中調べていなかったとしても、明日生まれるかも知れない。」(本文P109より)

 いわゆる、幽霊、霊能者、占いの類いをブッた斬る本。正確にはそれらの超常現象を信じている人間の寄り添っている薄弱な論拠をブッた斬る本。超常現象に対しては、僕もこの本の著者菊池氏と同じ考えなのですが、著者の様に理路整然と言葉に表わすのがどうにも出来なかった。なのでこの本を見つけて読了した時は、やったぜと思いました。

 オカルトを否定するのではなく、オカルト盲信を否定、です。現象としてあるかどうかはわからない。つまり不可知論的立場ですね。もし「存在する」というなら証明して欲しい。「存在しない」は証明出来ないので(上記引用文参照)、「存在する」と「存在しない」がぶつかった時、ディベートの基本として立証責任は「存在する」を主張している側にある。そうしてみるといかに霊能者のやり口や、幽霊を見たという人間のその発言の根拠が意味をなしていないかが述べられています。

 更に凄いのは、多くの人間にとって地動説並に当然だと考えられている血液型による性格診断の無根拠性も扱っています。血液型占いの類いに根拠無しの判断を下しているのは、僕以外には「HUNTER×HUNTER」のヒソカと「覚悟のススメ」の葉隠覚悟ぐらいだと思っていたのでこれも嬉しい。

 血液型で人を決めるのは差別に繋がる例として、某化粧品メーカーが女性社員採用の際に、血液型で採点基準を設けていた事が挙げられています。

 その内訳、「B型10点、O型9点、AB型6点、A型3点」。

 A型女性の立場は? しかも化粧品メーカーですよ。美しさを追求している企業ですよ。つまりひょっとしたら別の意味(A型女は不美人揃い)が含まれてるかも知れないし。ちなみに僕が血液型性格診断を信じてないのはあくまでその迷信にも等しい無根拠性ゆえで、実は僕が女でA型だとか、実は僕に彼女がいてそのコがA型だとか、それで必死になってるなんてオチは決してありません。「B型だから結婚したくない」とか「ユダヤ人だから処刑」とか「長男なんだから我慢しなさい(BY父親)」とか、努力の介入する余地のない、持って生まれた部分で人に線を引くのが嫌いなんですよ。

 そんな感じでこの本、非常にお勧めです。タイトルから難しい専門書を想像するかも知れませんが、平易な文章で書かれているし、時折ふざけてたりもしてとても読み易いです。「予期の確証傾向」「バーナム効果」等、内容は何となく経験から分かっていながらも、あやふやだった事柄にも専門用語が出来ているのにも感動。

(20021008)


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