春日武彦
●「ロマンティックな狂気は存在するか」(新潮OH!文庫)
自分は「恐怖」という観点から見れば、ホラーよりもサイコサスペンスの方に恐ろしさを感じる人間なんです。
ホラーってのは「コウモリに変身する」「月を見てオオカミになる」「月を見てヤマンバギャルになる」といった、現時点に於ける科学の範疇で、明確な解答が出ていない部分を「あり/前提」としてる内容のもの。一方サイコサスペンスは、「異常犯罪」「快楽殺人」などを扱ってるもの。
何故後者のほうに恐怖を感じるかと言えば、現実の事件としてあり得そうな内容だから。「狂気」は「心」のなせる業。心に関して言えば、様々な可能性を内包している。だから何が起こっても、
狂ってるから
の一言で片付く為、あり得そうだと思いがちなのですが、この本を読んで、それが非常に誤解である事を知りました。
済みませんでした春日先生
参りました春日先生
僕の負けです春日先生
心もまた、解明されていない。解明されていないが故に、「何でもあり」との誤解を受け易い。その辺がかなり強調された内容です。著者は精神科医ですので、精神科というものがどれだけ誤解を受けているかにも何度も言及されており、ちょっと愚痴にも聞こえがちなぐらいです。が、やはりそれぐらい強調しなきゃ世間一般の誤解したイメージは払拭されないのでしょう。
そして、それを充分に理解した上で、様々な精神症例を扱っている「第6章 文学的好奇心をそそる精神症状」、これがとりわけ興味深く読めます。多重人格、恋愛妄想(エロトマニア)、記憶喪失、憑依現象、幻影肢、既視感、替玉妄想など。フィクション構築(あくまでもフィクション)の参考になります。
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