J・M・スコット


●「人魚とビスケット」(創元推理文庫)

1953年3月7日から二ヵ月間、イギリスの大新聞に連続して掲載され、ロンドンじゅうの話題になった奇妙な個人広告。広告主の「ビスケット」とは、相手の「人魚」とは誰なのか? それを機に、第二次世界大戦中の漂流事件に秘められた謎が解き明かされていく......。

 幻の傑作として新訳復刊された作品。冒頭の奇妙な新聞広告から始まり、途中で過去の漂流の様子を描写、そしてラストに冒頭の謎が解き明かされる。そんな構成になっています。

 読み終えた感想としては、イマイチ。これは僕がミステリを読む際、ラストの驚きに期待を集中するタイプだという、ただそれだけの個人的な理由の為。「幻の傑作」っていう前評判に過剰な期待をし過ぎたってのもあるかも。

 謎の広告ってのは実際イギリスで新聞掲載されたものらしく、それに対してJ・M・スコットが想像力を駆使して物語を造り上げたのがこの作品。当時ベストセラーになったってのはその辺が主な原因だと思います。暴露本(実際は違うけど)に興味を示す感覚で。

 とは言っても中盤(というか大半を占める)での漂流シーン、かなり緊迫感溢れる内容でした。男3人、女1人、計4名での漂流。読む前はその人数構成ゆえ何かしらエロティックな方向に向かうのではとの期待もあったのですが、そんな要素は別段ナシ(恋慕はアリ)。

 洋上での太陽の熱/潮/汗/不安/絶望、そういったものがヒシヒシと伝わり、何だか海が嫌いになりました。この作品を読んだ後しばらく、海がちょっとでも出てくる作品を読むと潮の臭いが漂ってくる等、軽くトラウマです。

(20020323)

 


活字中毒記へ

トップへ


 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送