井上夢人


「メドゥサ、鏡をごらん」(講談社ノベルス)

<メドゥサを見た>と書き残し、 自らを石像に封じこめた作家の死。そして頻発する怪異と怪死! 死を呼ぶ禁句、それが<メドゥサ>......!?

 井上夢人(岡嶋二人時代でも文章担当)はスイスイ読ませる文章を書く作家の一人です。ノベルス340ページほどで割と長いのですが、読むのが億劫になるコトはありません。同じページの海外作品翻訳だったら3倍は読むのに時間かかりますな。

 読みやすさを優先して漢字も極力開く、内容のリフレインも多用するという感じで、その辺は決して井上夢人の作家としてのデメリットと思いません。ちょっと安っぽい感じも受けるんですが、広い読者層を射程に書かれた文章です。書籍が汎出してる時代、読み捨て型(言葉は悪いが)のエンターテインメントは別に悪徳ではないでしょう。

 ただ、この作品は狙いがよく分かりませんでした。夢野久作「ドグラ・マグラ」の現代版という雰囲気も感じたし、麻耶雄嵩「夏と冬の奏鳴曲」を髣髴させる部分もありました。ひょっとしたらそれらの作品同様、読後あれこれ合理的な解決を読者に考えさせる、というのが狙いなのかも知れません。が、それを考えようという気にならないのが、読み捨て型の弊害です。

(20030111)

 

 


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