スティーヴン・ハンター


●「魔弾」(新潮文庫)

ユダヤ人シュムエルが移送された先は、ドイツ南西部にある収容所だった。ある夜のこと、作業中の囚人たちが漆黒の闇のなかで次々と倒れていった。ただ一人逃げ延びた彼は、仲間が絶対不可能なはずの標的にさらされたことを知る。一方、米国陸軍大尉リーツは、銃器の発注書からドイツ軍が要人暗殺を極秘裏に計画中だと気づくが......。

 原題は「THE MASTER SNIPER」。なのでこの「魔弾」というのは意訳でしょうか。カッコイイので全然オッケー。どうせなら「おい、このドイツ製のかっこいい銃を見てみろよ」という台詞なんかも「おい、このドイツ製の銃を狭い世界でキミしかいない他の名前が出てこないぐらいに意訳して欲しかったです。ウソです。T.M.Revolution知らないとワケ分からないコト書きました。

 ハンター作品ではさほどの評価を受けていない気もします。他の作品が抜きん出てるのかなあ。これしか読んでないのでその辺比較できないんですが。

 視点が様々に切り替わる感じで、主人公もこれといって限定できないストーリーですが、登場人物紹介で一番最初に書かれているレップあたりがメインの一人。このレップがマスタースナイパーの異名を持つ腕利きの狙撃手。話が進むに連れ、どんどん人間味が薄れて使命遂行マシンのようになるのが意表を衝かれました。メインだけどまるで感情移入出来ません。桐山和雄みたいな感じ。

 リーツ大尉らアメリカ側が、僅かな情報からレップの存在とその目的を突き止めていく過程がイイ。この視点で読めば、スピリットはハードボイルド。

 そしてレップが狙う標的も意外。史実上の有名人が標的、という歴史的な事実に依存したオチではなく、作中で完結してる辺りに、作者の独創に満ちた小説という印象を持ちます。

(20021029)


活字中毒記へ

トップへ


 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送