ウィリアム・ゴールディング


●「蠅の王」(新潮文庫)

未来における大戦のさなか、イギリスから疎開する少年たちの乗っていた飛行機が攻撃をうけ、南大平洋の孤島に不時着した。大人のいない世界で、彼らは隊長を選び、平和な秩序だった生活を送るが、しだいに、心に巣食う獣性にめざめ、激しい内部対立から殺伐で陰惨な闘争へと駆りたてられてゆく......。

 これは読んでてムカムカしてくる作品でした。もうジャックが我が儘でイラつく。ジャックの身勝手なバカさ加減にムカつく作品です。バカだから予想通りの行動を取るのがまたイラつく。どこにでもいるバカなので最大公約数的に誰もがムカつくんじゃないでしょうか。バカは死ね。読んでてこれ程ムカついた時点で作者の人間描写の上手さが分かります。あんたの勝ちだ。

 『原始から社会秩序が生まれその中で個々の思想が対立していく』縮図という内容に読んだのですが、結局他人と生きるのはキツいぐらいの結論しか出ない感じにも思えます。無いものを補い合う、なんてのはなかなか難しい。

 一番思想に共感出来たキャラクターはピギーですが、実行力に欠けてる。徹底するなら誰とも接しないのがベストにしか思えません。リアル世界で普段から一人じゃ何も出来ないパラサイトシングルやモラトリアム中年に依存されがちな自分なので、その思いを一層強めた1作。強めるな。

(20020901)


活字中毒記へ

トップへ


 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送