コリン・デクスター


●「モース警部、最大の事件」(ハヤカワ文庫)

信頼できる警察/モース警部、最大の事件/エヴァンズ、初級ドイツ語を試みる/ドードーは死んだ/世間の奴らは騙されやすい/近所の見張り/花婿は消えた?/内幕の物語/モンティの拳銃/偽者/最後の電話 以上11編収録

 ソースが古いのでランキング変動してるかも知れませんが、イギリスで1番人気のある探偵はこのモース警部だったりします。そう言ってもピンと来ないかも知れませんが、2番がかのシャーロック・ホームズですので、それを知るとなかなか凄いものを感じるんじゃないでしょうか。

 この「モース警部、最大の事件」はデクスターの短編集で、モースものやノンシリーズを計11編収録。

 今までの長編は読んでてもまるで分からない内容でした。『モースが知ってる情報を組み立て仮説を建てる→証明しようとする→その仮説を裏切る新情報発覚』という形の積み重ねで幾度もひっくり返る内容なのですが、「それってどんでん返しの連続モノ?じゃあ読みたい」と思って手にすると裏切られます。途中途中でモースが何を追ってるのかがよく分からないので、ほとんど何が起きてるのかすら分からず終わります。モースと読者間のシンクロ率が低い感じ。別の文庫で西澤保彦がふざけ口調(方言)で解説を書いてましたが、あれが一番モースものの解説に相応しいです。

 んで、当短編集。短編ゆえに骨格がシンプルだから長編よりもきっと理解が容易だろうと思ってたのですが、まるで甘かったです。相変わらずワケ分からん。この言い回しはこう解釈するのかな、などと相当の脳内補完をしてどうにか自分を納得させてるレベルです。

 気に入った作品は「エヴァンズ、初級ドイツ語を試みる」「近所の見張り」「花婿は消えた?」辺りかな。特に「近所の見張り」がスマートで楽しめました。

(20020925)


「ウッドストック行最終バス」(ハヤカワ文庫)

夕闇の迫るオックスフォード。なかなか来ないウッドストック行きの最終バスにしびれを切らして、二人の娘がヒッチハイクを始めた。その晩、娘の一人が死体となって発見された。
もう一人の娘はどこに消えたのか、なぜ名乗り出ないのか? 次々と生じる謎にとりくむテムズ・バレイ警察のモース主任警部が導き出した解答とは......

 再読。再読なのにやはりよく分からなかったというのが正直なトコロです。最後まで読み終えても今までの行程が殆ど記憶に残らない、何がどうだったのか分からないのがデクスター作品。

 解説にある「一体何をやりたかったのか分からないのがデクスターの特徴」ってのがこの作者の作品特徴を適切に言い表わしてます。ミステリはたいていラストに作者の仕掛けていたものが読者の目に表わされる構成を取っています。それに驚くか驚かないかはともかく。そうした作者の仕掛けたモノ/意図がてんで見えないのがデクスター小説の持ち味に感じます。

 それでも僕がこのシリーズを読んでるのは、モースのキャラクターの面白さが大きいです。キャラ萌え感覚です。モノローグ/台詞やらの断片だけで充分面白い。この「ウッドストック行最終バス」は1作目なので、ワトソン役とのファーストコンタクトありで「そう言えばこうだったなあ」と読んでる最中懐かしかったです。今はそれがどうだったのかもう忘れてしまいました。デクスター小説恐るべし。

(20030222)


「キドリントンから消えた娘」(ハヤカワ文庫)

二年前に失踪して以来、行方の知れなかった娘バレリーから両親に無事を知らせる手紙が届いた。彼女は生きているのか、としたら今はどこでどうしているのか。
だが捜査を引き継いだモース主任警部は、ある直感を抱いていた。「バレリーは死んでいる」......幾重にも張りめぐらされた論理の罠をかいくぐり、試行錯誤のすえにモースが到着した結論とは?

 モースものは初期作品の異常パズラーぶりが白眉、そんな中この2作目が何かと代表作として引き合いに出されやすいです。僕としては正直他のよりも多少理解が容易だったのでイージーな印象を持ってるのですが。多少ね、多少。

 初読時には終盤の怒濤の展開にガンガンと予想が裏切られるという、珍しくモースの推理とのシンクロ率が高かったのですが、今回再読したらそれすら覚えていませんでした。

 モースの推理はある意味クイーン系の探偵のアンチテーゼですね。「外す危険を避ける為に最後まで結論を公開しない」、それが従来の探偵ですが、モースはビシビシ予想が浮かんだら動きまくります。動くのに根拠が薄いです。幾つもの推測が枝分かれしてるおおもとの前提すら仮説という。

 よくクロスワードパズルに例えられるのがデクスター作品で、最初の縦の言葉を間違った為にどんどんと謝った道に進み入っていく、そんな推理を見せます。それに本気で着いていくには読者は逐一枝分かれを把握していなきゃならないという、ちょっとした苦行を強いられる作風。SFなんかは分からない部分をそのまま読む自分はこれもそうしたSF的読書スタイルで読んでるですが、十全に楽しめてるか怪しいものがあります。

(20030228)


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