ダン・シモンズ
●愛死(角川文庫)
この中編集には、シモンズ自身のあとがきが収録されています。作品に触れてもシモンズの生の発言を知らなかった自分には、これがとても面白かったです。かなりの皮肉屋。土屋賢二とかロシュフコーとかビアズみたいな印象を受けました。
このあとがきによるとマーク・トゥエインも相当な皮肉屋らしいです。そう言えばシモンズの「エデンの炎」にトゥエインが出てきてるんですが、確かに皮肉屋に書いていたのを思い出しました。
○真夜中のエントロピー・ベッド
事故に関するエピソードを鏤めながら進行する父と娘の物語。この事故の鏤め方がとても上手く、(イヤなコトが起きそうだ、ああ、ヤバい感じだ)と、最後の最後まで不安感がまとわりつく作品。
○バンコクに死す
ごった煮感覚に満ちたバンコクという舞台で、主人公の現在と過去が交差しながら進行するホラー。シモンズのホラー作品には、伝承の中の怪物に科学的アプローチを試みるものが幾つかあって、この作品もその一つ。ラストが鮮やか。
○歯のある女と寝た話
ネイティブ・アメリカンの少年を主人公に据えたファンタジー的な作品。明確なオチってよりも波のある展開(シモンズの長編的な)を見せる物語です。作中に「ダンス・ウィズ・ウルブズ」への批判じみた表現があり、更にあとがきでもモロ書いていました。
○フラッシュバック
SFです。こうしてみるとこの中編集は、様々なシモンズの手札を見るコトが出来ます。フラッシュバックという「過去の記憶を再生する麻薬」。これに淫する子供、母親、祖父、三者それぞれの世代/価値観での「過去」。最後にはこの3つを上手く纏めています。
○大いなる恋人
タイトル「愛死(LOVEDEATH)」に最も密接な関わりを持つ中編。架空の詩人の戦場で記した手記という体裁を取っている作品で、作者自身あとがきで述べてるようにモンタージュ的なものになっています。正直よく味が分からなかったというのが僕の感想です。
(20020108)
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