ウィリアム・ピーター・ブラッティ


「エクソシスト」(創元推理文庫)

女優クリスの娘リーガンを突如襲う異変。ひとりでに揺れ動くベット。部屋を包む冷気。そして少女は激しく変貌し、男の声で叫ぶ。彼女に何が起きたのか? だが、汚辱に満ちた黒ミサの痕跡が教会で発見され、クリスの友人である映画監督が惨殺されるに至って、事態は《悪魔憑き》の様相を見せはじめた。クリスは神父カラスに助けを求めたが、そのときはまだ知らなかった......目の前で善と悪との闘争がはじまろうとしてることに!

 映画によって本格的に火がついた作品ですが、元々発表時にもベストセラー入りしてたんですねコレ。映画の印象強いな。つーかたいていの方はこの作品に関して背面階段歩きしか知らないでしょうね。

 ストーリーに関しても、『少女に乗り移った悪魔を神父が祓う』という大枠が知られてるだけなんじゃないでしょうか。たとえこの作品に触れたコトのない人でも、内容をきっとそう把握してるはず。僕もそう思ってました。

 ホラーというジャンルに『恐怖』を求めるのはもう諦めてる僕ですが、この作品は引き込まれるように読み進めるコトが出来ました。とは言っても『恐怖』に関しては他のホラー作品と同様微妙な読後感だったのですが、思いのほか衒学部分が多く、しかもそれが楽しめたのが収穫。

 神父カラスの造型がイイです。作品への『少女に乗り移った悪魔を神父が祓う』という漠然とした印象から、あれこれテキトーなコト言って聖水やら念仏やら唱える役割だろうと思ってたのですが、このカラス神父は精神科医でもあり、「神父様お助けを! 娘に悪魔が取り憑いてしまったのです」と助けを乞うクリスに対して、

いやぶっちゃけ悪魔なんていないですから。奥さんイイ歳して何言ってるんですか。それ多重人格か何かでしょ。(意訳)

ぐらいの返答をしてて超意外でした。クール過ぎる。イエズス会神父の態度じゃねえ。

 そんな感じで、神父が少女リーガンの変貌に対して何かしらの『医学的に合理的な解釈』を下すと、新たな様相をリーガンが見せ今までの解釈では説明が付かなくなる、そこでその新しい様相をも含めて更に別の解釈を立てる、この繰り返し部分に精神医学的な衒学が含まれてて興味深く読めました。

 もちろんホラー作品としても体裁は整ってて、ある意味背面歩きが全ての映画版とは異なり、様々な側面から観賞するに耐えうる作品です。

(20030213)


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