リチャード・バック


●「かもめのジョナサン」(新潮文庫)

 これは滅茶苦茶有名ですね。

 一切の肉を省いた作品で、その時その時の精神状態やら環境次第で、非常に恣意的な捉え方の出来る作品です。色々な物事の比喩として捉えるコトが可能な、森羅万象の最大公約数的なエッセンスのみで構成されています。

 世界的にベストセラーになった作品ですが、このエッセンスのみという徹底的に削がれた内容ってのが、あらゆる読み手のあらゆる読み方を許容できていると思います。

(20021020)


●「イリュージョン」(集英社文庫)

 初読時にはジョナサンに一つの側面から肉付けしてみた内容にも思えた作品です。徹底した自己肯定が描かれています。一度切りの人生、自分が楽しまなきゃ意味がない。もうフレーズとしてはよくある言葉ながらも、意外と自分の人生に組み込まれていないんじゃないでしょうか。誰がどう思おうが自分の人生、自分が納得する生き方をして、全然構わない。

 リチャード・バックの小説は、物語としての面白さもありますが、読んでて元気の出る啓蒙書、と僕は位置付けています。

(20021020)


●「ONE」(集英社文庫)

 悔いの残らない生き方をする。パラレルワールドで様々な『あの時別の選択をした』自分と出会う主人公を通して、そんなメッセージを感じる作品です。啓蒙的な内容なのは他のバック作品と同様ですが、読感がそれぞれ異なっているのは物語的なエンターテインメント部分での引き込み方が上手いからでしょうな。

 んで、この作品でとても納得した部分がここ。

「だいじょうぶ。彼を信じるわ。だって、彼、自己弁護しなかったもの。本気で自分を変えたい、と思ったのよ!」(P265)

 自分が悪かったと言ったり謝ったりしても、ちょっとでもそこに自己弁護が入ると本心では何も反省してないだろうな、と分かります。「申し訳なかったと思っています。そんなつもりはなかったけど」、なんてのも『そんなつもりはなかったけど』と一言自己弁護を添えただけで『そんなつもりはなかったから私は何も悪くない』と、結局台無しになってますから。

(20021020)


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