飛鳥部勝則


●「バベル消滅」(角川文庫)

小さな島の版画館で警備員として働く風見国彦は、毎日決まった時間に訪れるセーラー服の少女に気づく。彼女の目的は、アントニスゾーンの版画『バベルの塔の崩壊』。閉館までその作品の前に立ちつくしてる少女に、風見は興味を抱く。
同じ頃、島では連続殺人事件が発生。殺人現場には必ず『バベルの塔』の絵が残されていた。
殺人事件の犯人は誰か、バベルに秘められたメッセージは何か、そして美少女と事件の関係は?

 自作の絵画を口絵として添える作家、飛鳥部勝則。んで、その口絵なんですが、セーラー服を着た人物とバベルの塔の絵です。ですが、このセーラー服の人物がにしか見えません。単なる変質者です。しかも作中でもこの絵(登場人物の伊庭典克が描いたものになってます)について言及されているんですが、この絵を見た人が「藤川志乃」の顔と一瞬見紛う描写があります。藤川志乃とは口蓋で「美少女」と表現されている女子高校生のコトです。台無しです。

 第1章「バベル侵食」にて教員/用務員/事務員の死を捜査し、第2章「バベル生成」にて「さてみなさん」と纏めに入る、いわゆる探偵役っぽいのが、教員の田村正義という男。この男がもう超ネガティブ。読んでて鬱になりそうです。飛鳥部勝則作品を読むのはこれが初だったので、(このキャラのこの発言/ミステリ観/思考ルーチンに作者の考えが反映されているのだろうか?)と、もう悩む悩む。

 読み終えてのこの作品の感想としては、かなり慎重に作り込んでるミステリという感じ。海外の某作品と筒井康隆の「ロートレック荘事件」を思い起こしました。

 海外の某作品ってのはネタバレになるので触れれませんが、「ロートレック荘事件」を思い出したってのは、最後の謎解きでいちいちページを表記して『この時にこう出ていたのはこういう意味』的解説が入るトコロ。この手法は正直僕としては興醒めなんですが、正解をここまでしっかり公開しないと矛盾を見つけたと勘違いして指摘してくる人が出るからでしょうかね。

(20020303)

 


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