有栖川有栖


●「幻想運河」(講談社文庫)

シナリオライターの卵、恭司がアムステルダムで遭遇したバラバラ殺人事件。在外日本人社会の濃密で澱んだ空気が生んだ犯罪が、不思議な糸で大阪の殺人事件につながっていく......。ふたつの水の都をいろどる、奇怪な薔薇のイメージはなにを意味するのか?

 有栖川有栖ミステリ・ベスト1という表記がされてるのをよく目にする作品です(この文庫の裏表紙にも書かれています)。読んでみて納得。作中作のパートが恐らくこの作品をそう呼ばせているんでしょうな。

 この幻想的な作中作のパートは京極夏彦「魍魎の匣」を読んでいた人には衝撃が薄いかも。「魍魎の匣」もマイケル・スレイドの「カットスロート」を読んでた僕には衝撃が薄かったのですが。出会う順番で印象は変わりますね。「カットスロート→魍魎の匣」って流れで読んだ人って僕ぐらいでしょうけど。

 オランダやドラッグの知識がふんだんに盛り込まれた、余剰の部分でも充分に読ませるミステリです。関西人に多く見られる関西最高的描写は相変わらず鼻につきますが。そう言えばノンシリーズでしたね、この作品。

(20021025)

 


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