山田秋太郎


「R.O.D(作/倉田英之)」1巻

 大英図書館特殊工作員/「ザ・ペーパー」こと読子=リードマンを主役としたアクションコミック。読子は極度の愛書狂(ビブリオマニア)で、書物の鑑定能力に優れ、更にはエージェント名「ザ・ペーパー」が表わす通り、紙を操るコトが出来ます。

 コミック版は4つのエピソード(1つは番外編)から構成されていて、この1巻ではその内2つが収録。1巻第1話が最初のエピソードで、読子の能力/キャラクターの紹介がされています。本を愛し本に愛される、とは言え、読子がレア本「黒の童話集」を鑑定してるシーンはエロ過ぎです。

 2話からこの巻ラストまでで2つ目のエピソード。高校生にしてミリオンセラー作家/菫川ねねねにまつわる話です。鞠原一巳という愛書狂に拉致されるねねねを守る読子の活躍。作中でも触れられていますが、キングの「ミザリー」的なシチュエーションです。鞠原の部下には炎を操る特殊能力者/ファイヤーインクがいて、紙使いの読子には天敵とも言える存在(ていうか一方的に不利)。

 途中でジャンプやジョリーンなんて言葉が出てきて「え? え? 大丈夫なの? それって集英社でしょ」なんて動揺したんですが、この作品ってウルトラジャンプ(集英社)連載だったんですね。勝手に角川だと思ってました。

 この「R.O.D」という作品は基本構造はまったくオーソドックス。台詞にしても、悪役の主張やそれに対する主人公の反論など、骨組みとしてはかなりフツー。それでいながら妙な味を出してるのは、その骨組みを埋めている「道具」が書籍や紙にまつわる言葉だからじゃないかと思います。萌えとシュールギャグの違いはあれど、この作品を読んで僕が真っ先に思い出したのがしりあがり寿の「流星課長」だったりしたのはその辺に原因がありそうです。


「R.O.D(作/倉田英之)」2巻

 巻最後に収録されてる番外編を別として、この巻から最終巻4巻までが「私立満州学園編」とでも言うべき「R.O.D」のメインエピソードとなります。読子の今回の任務は学園のどこかに存在すると言われる『埋蔵図書館』の捜索。A級とB級にランク分けされた生徒達、そして特殊能力を有するA級生徒。更には死んだハズの前任「ザ・ペーパー」ことドニー=ナカジマが学園にて謎の暗躍を見せます。

  途中にちらりと入る過去の回想、ドニーと読子と、ドニーの友人でライバルだったリドリーの描写なんですが、これを思い出し、リドリーの言葉「突出した才能は共存しない それを忘れるな」を反芻しているドニーのシーンが上手い。ドニーは実はやはりすでに死んでいて、このドニーはリドリーの変装だったと後に分かります。つまり、自分の言葉を自分に言い聞かせている描写です。

 そしてそのドニーの生存を前に嬉しさのあまり乙女モードに変貌してしまう読子。ニセモノなのにな。恋に惚けてせっかく勝ち得ていたB級生徒への信頼も失いつつあります。

 終盤では菫川ねねねも登場(転入)しますが、別にこのエピソードに絡ませなくても良かった感じ。ねねねファンへのサービスなのかな。


「R.O.D(作/倉田英之)」3巻

 リドリーが正体を表わし、回想シーン突入。そして埋蔵図書館の出現までを収録。

 リドリーの回想が非常に長い。この巻の3分の2ぐらいを占めています。リドリーを通してドニーや読子の過去、大英図書館という組織が描かれます。どうにもリドリーが主役に見えます。ドニー=ナカジマとの友情、やおい向けです。リドリー受けで。

 ドニーの死を確認した読子は廃人化。そして読子の『喜怒哀楽』を引き金にいよいよ埋蔵図書館が姿を表わします。単なる怪物です。ファンタジーで言えば魔王復活シーンです。でも図書館。

 何となく気付いたコトに、眼鏡っ娘の読子や眼鏡っ漢のドニーのメガネ、アンダーフレームに見えるけど眉と重ならないようにしっかり描いてないだけなんですね。


「R.O.D(作/倉田英之)」4巻

 最終巻。埋蔵図書館に眠る英知の結晶『真書』を巡る最後の攻防です。

READ OR DIE

読むか、死ぬか。ドニーが残した手紙を引き金に読子復活。埋蔵図書館へと突入したリドリーとの決戦。紙バトルです。普通にやれば二人の会話も凡百のファンタジー/SFですが、いちいち本/読書/紙に絡めたやり取りが奇妙な味を醸し出しています。

 ラスボスに落ち着くのは大英図書館主任/ジョーカー。全ては彼のシナリオ。回想でドニーが最後の任務として『読子に殺される』と言うのを飲んだのが腑に落ちない。

 生徒会長/天久甍の正体はどう捕らえればいいのか。生まれ変わりか、整形した本人か。当作品悲劇大賞のリドリーもこれでどうにか救われたのかな。

 死者ながらも最後まで存在感を貫き通したドニー=ナカジマが素敵です。


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