永井豪


「キューティーハニー」(全2巻/扶桑社文庫)

 雑誌「週刊SPA!」にて92年から半年程連載されていた新生キューティーハニーです。92年ってもう10年前なんですが。

 大昔にアニメで観ていた記憶しかないキューティーハニーですが、今回初めて永井豪の描くオリジナルを見ました。一応首領シスタージルが率いる犯罪組織「パンサークロー」との闘いが話の主軸なんですが、全体的におちゃらけムード漂う緊迫感のないストーリーになっています。

 脱ぐのがもちろんウリの一つですが、そそらないのはどうしてでしょうか。絵が自分の好みでないってのは置いておいて、恐らく恥じらいが足りないのがそそらない原因だと思います。ポンポン乳出してるのは素敵ですが、やはりそこに羞恥心が欲しい。

何かまあ全体的にどうでもいいんですけどね。


「デビルマン」(講談社漫画文庫)

1巻

 名ばかりが先行していてまともに読んだコトのない作品が色々とあるんですが、この「デビルマン」もその一つです。アニメ主題歌のフレーズが耳に残っているのに内容はロクに覚えていません。観ていたかどうかも正直分かりません。よくパロディに引き合いに出されるからそれで曲が頭に残ってるのかも。

 この1巻では主人公/不動明が親友の飛鳥了から世界が悪魔に狙われていると知らされ、魔界の勇者と呼ばれるデーモン/アモンと合体し、デビルマンとなるまでの顛末が描かれています。突拍子もない導入を薄い根拠で受け入れるのが昔の漫画ならではなんですが、このデビルマンへの変化は当時としてはかなり下調べをしている方なのではないでしょうか。

 今でこそ色々と悪魔関係の作品が作られているので、受け手の悪魔に対する知識が底上げされている感じですが、この作品が描かれた時期を考慮に入れると、永井豪頑張ってます。


2巻

 デーモンの最強の女戦士/シレーヌとの闘いが収録。デビルマン関係のイラストやフィギュアでよく見かける頭に翼が生えてる例のキャラがシレーヌです。敵悪魔の1名ぐらいの認識しかなかったのですが(実は名前も曖昧だった)、バトルも長めでデビルマンも苦戦してます。ラストシーンも意外な幕引きで、カリスマ悪魔な感じです。ていうかこれデビルマン負けてるでしょ。

 後半には後味の悪いホラー風味の短編が2つ収録。シレーヌ戦とちょっと傾向が違うものなんですが、どうしてこの2巻に入れたのか。全5巻とする上での編集の関係なのか。


3巻

 この巻は短編集です。時空を駆け巡り歴史上に現れた悪魔との戦いが描かれているものが中心。英仏百年戦争(ジャンヌ・ダルク)/古代ギリシャ(女神ニケ)など、歴史と絡ませた感じの短編が多め。

 中には『協力/辻真先』なんてのもあるんですが、これらの短編はもしかしたらアニメ30分エピソードを逆輸入したものなんでしょうか。真先、脚本書いてたらしいし。

 最初この漫画版「デビルマン」を読み始めた時は、一本のメインストーリーのみで構成されている作品だと思い、この3巻で(あれ? 読み切り連作なのかな?)と戸惑い、4巻にてやはり一本ストーリーだと考えが戻りました。そういう意味ではちょっと本編とは関係ないエピソード集です。読み飛ばしてもオッケーな感じ。


4巻

 この4・5巻でデビルマン本編の真髄が描かれます。悪魔王ゼノンがいよいよ登場、更にはその上に位置する大魔神サタンの存在も明らかに。ところで「終わりの始まり」の導入部分はヒッチコックでしょうか。それともマニアックに「未来惑星ザルドス」?

 パワーゲームとして、段階的により強いランクの悪魔の出現になっていますが、内容的にはそういった連中とのバトルシーン中心ではなく、あくまでもストーリーそのもので引っ張っていってくれます。

 悪魔を敵視/恐怖するあまり人間同士が恐慌を起す、この部分は、大小を問わず国家/社会/組織という人間が造り出したコミュニティのモロさの比喩になっている感じ。


5巻

 伏線に対する自覚/隠し方という面で、漫画家それぞれのクセってのがあると思います。例えば冨樫義博あたりは『伏線は拾える読み手だけ拾えばイイ』ぐらいの描き方をしてる漫画家だと思います。で、この永井豪はどうかと言えば、誰にでも分かるような描写で事前に用意するタイプ/言っちゃわずにはいられないタイプ、だと感じています。まあ、古い漫画家ですから。

 そういう作風なので、この巻で明らかになる、飛鳥了がサタンであるという事実/人間の持つ悪魔への恐怖心とそこから導き出せる最悪の未来シミュレーションを得る為に、サタンとしての記憶を消し、(シミュレーション出来るくらいの脳みそを持った)人間として人間界に紛れ込む/そしてその考え出す恐怖をゼノンがキャッチして実行する/このとんでもないシナリオは後付けで造り出した設定だと思います。当初からこうであったとは思えない。こうする予定が最初からあったら、永井豪ならもっとあからさまな伏線を張っていたでしょう。

 そんな後付け設定なんですが、ピッタリ今まで描いてきた内容に矛盾なく、その上ストーリー的にもこれ以上の選択はないと言える完璧で見事な展開。永井豪、まさにこの作品(さらに言うなら4巻後半から5巻ラスト部分)を描いていた時は悪魔が憑いていたとしか思えない出来。

 ラストシーンの美しさと残留は壮絶です。まさに傑作と呼ばれるに相応しい作品。


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