ジョジョの奇妙な冒険
第3部 空条承太郎 -未来への遺産- 


<12巻>

 この巻のラストの「悪霊にとりつかれた男」から第3部スタートです。3代目ジョジョは日本人/空条承太郎。初代と2代目が同じ顔で性格正反対だったのですが、今回は顔つきからして違います。初登場時のコマでの台詞が母親に向かって「やかましい! うっとおしいぞこのアマ!」ときています。口を開かないで。更に描き文字が『ガル』。

 そういや2部ラストでジョセフが日本人を嫌ってる描写がありますが、この時点で仗助もう存在してるんだよなあ。

>長くかきつづけるとそこにヒズミやキズができてくるということでしょうか...。大人はウソつきではないのです。まちがいをするだけなのです。(4巻作者あとがきより)

 最後は100年来の時を経て海底から引き上げられる棺桶。世代を越えて続けられる戦いの予感を含ませ次巻へ。


<13巻>

 DIOの復活により「幽波紋(スタンド)」が発動したジョースターの血統、承太郎の母親ホリィがスタンドへの抵抗力を持たないが故の危機、その呪縛を解くにはDIOを殺すしかない。スタンド使いがDIOのいるエジプトへ出発するまでを収録。

 承太郎以外のスタンド使い、アブドゥル/花京院との闘いを経て一行がエジプトへと向かうのが決定。地球上究極の生物が生まれた2部に比べると露骨にスケールダウンしていながら、この3部は世界を股にかける移動距離と、道中襲い掛かるスタンド使いの数の多さから巻数も1部2部を足した以上になっています。何故か「ディオ」の表記が「DIO」になってるのが謎。

 「星のアザをもつ男」の回、見開き扉でのジョースター家の説明にこうあります。

>生涯一人の異性しか愛さないのも共通である。

えーと、

>長くかきつづけるとそこにヒズミやキズができてくるということでしょうか...。大人はウソつきではないのです。まちがいをするだけなのです。(4巻作者あとがきより)

 女性にモテるって属性は承太郎からですね。2部じゃジョセフよりシーザーがスケコマシキャラだったし。

 復活DIOはこの巻あたりのシルエットが取れない時が一番カッコイイです。初登場時の花京院の顔がヤバいです。まだ描き慣れていないからだとは思うんですが、「灰の塔」戦ではもう最終的なデッサンにまで変化しています。


<14巻>

 ポルナレフ参戦、船長、オランウータン戦までを収録。 

 同行しそうになった女の子は一体なんだったのでしょうか。ストーリーに上手く絡められなかったのかなあ。オランウータンの時の為のお色気担当ですか。

 「バオー来訪者」ではマンドリルが出ましたが、今回はオランウータンです。デカいサル最高。それだけで不気味。

 エンヤ婆の息子にしてポルナレフの妹の仇、両右手の男。この設定がイイ。連載時はこの両右手の男がDIOに至るまでの中ボス的なイメージでした。結果的に両右手の男が倒されてからもDIOまでかなり長かったですが。


<15巻>

 「悪魔」のデーボVSポルナレフ、これはホラー映画的なシチュエーション。スタンドの着想は超能力を具体的に(人型などで)表現、というものなんですが、呪術で人を呪い殺すなんて現象も確かにこの世界観ではスタンドの仕業に出来る感じ。

  イエローテンパランスは当初からああいう展開を予定していたんでしょうか。『花京院が裏切り者』という謎の念聴が導入になってるエピソードですが、この謎は『イエローテンパランスが花京院に化けていました』という割と安易なオチでした。強いスタンドを倒すには本体を叩く、というのが実践された話。

 シンガポールからインドに突入、いよいよポルナレフの妹の仇「吊られた男」両右手の男ことJ・ガイル登場。「皇帝」のホル・ホースも登場しますが、その初登場シーンが凄い。象に乗って現われます。アブドゥルがホル・ホースの銃弾を喰らいます。これはその後実は額をかすめていただけだったと判明するんですが、どう見ても貫通しています。荒木飛呂彦、この段階ではアブドゥル殺していました。


<16巻>

 J・ガイルにトドメを刺すべくエメラルドスプラッシュを放とうとしたトコロで、金貨で「吊られた男」の軌道を予測させなくしましたが、これってそのまま本体にトドメ刺してオッケーなんじゃないんでしょうか。まあ、これで一応相手の手札を全て叩き潰して完全勝利、となったのでヨシとします。

 「女帝」戦ではジョセフが主役。人面疽の攻撃を受け一人で吹っ飛んでるジョセフ、それを見て「なんだこの人!」と驚くインド人が面白い。全く何だこの人です。久々にジョセフの決め台詞「おまえは『何々』という」も出て決着。

 「運命の車輪」、これもホラー映画的です。何かこういう感じでひたすら車に追われるのあったような。最後まで運転手が不明なままのやつ。


<17巻>

エンヤ婆、大暴走の巻です。

 7名の刺客を悉くジョースター一行に迎撃されたエンヤ婆が霧のスタンド「正義」を操り自ら出向いてきます。ホル・ホース、見開き扉絵(連載時巻頭カラー)で何故か承太郎らと並んで描かれています。この時は仲間にする予定だったのでしょうか。

 エンヤ婆はスタンドが強烈ながらも存在や立ち回りがコミカルな部分が多く、笑っていいのか、サスペンス性にドキドキするものか、作者の意図が読めないトコロもあって楽しい。最後の倒され方も随分あっさりしています。

 最終的に全タロットが使われた第3部のスタンドですが、当初敵のスタンド使いをどれぐらい出すつもりだったのか想像するに、この7人の刺客+エンヤ婆、で次はもうDIOだったのではないのかと思っています。スタンドバトルの調子を作者自身が理解してきたコトなどから、DIOまでの中継バトルを増やしたのではないのかと思えるんですが。

 エンヤ婆から情報を引き出そうとするジョースター一行の前に登場するのが「恋人」のカードを暗示に持つダン。植え付けられたDIOの「肉の芽」を成長させる力を持っています。


<18巻>

 ダンの要求に忍耐している承太郎。やられたコトをメモしてるシーン、連載時には凄い陰険な感じがしてこんな主人公イヤだと思ったですけど、今読み返すと面白いです。承太郎、歴代ジョジョで一番好きです。

 ダンの陰湿さが相当なものだっただけにオラオラ4ページ連発はかなりのカタルシス。

 連載2回分でギャグっぽく倒された「太陽」を経て、次はかなりの強敵「死神13」へ。精神が無防備になっている睡眠中に、夢の中で攻撃してくるスタンド。目覚めると夢の中の出来事は忘れているという強敵ぶり。2回夢の中で攻撃された花京院が本体が赤ん坊であるコトに気付きましたが、他の3人に止められ、決戦は夢の世界へ。口に隠していたサソリをモバアアっと吐き出す赤ん坊の絵が容赦なくて素敵。この赤ん坊マジで可愛くない。


<19巻>

 「死神13」戦終了。絶対的な強さを誇っていた「死神13」、スタンドと闘った経験なしってのも手伝ってかサクッと敗北。

 そういや20巻にて「9栄神」のカードが登場する際、花京院がタロットカードで暗示されるスタンドは「世界」を除いてもういないという意味のコトを語っていますが、この「死神13」のコトはみんな納得してくれたんでしょうか。闘い直後は黙っていたみたいですが、カードに詳しいアブドゥルが説得に力添えしてくれたとか。

 んで、次の「審判」戦にてそのアブドゥルが実は生きていたコトが判明、再び一行に加わるのですが、これは当エピソード内で途中からストーリー修正した結果そうなったように思えます。それぐらい無茶に纏めた印象を持ちます。ポルナレフ一人を騙す芝居だと思って読み返しても承太郎や花京院の表情が真に迫り過ぎなので。


<20巻>

 まずは「女教皇」ミドラー戦決着。ミドラー、格ゲー版ではとてもエッチなコスチュームで悩殺してくれましたが、本編では最後まで顔が見れませんでした。ていうかこの闘い、承太郎が何のひねりもなくゴリ押しで終わらせています。 

 エジプト上陸。「ジェットなら20時間で来る所を...30日もかかったのか」。何だか電波少年を髣髴させる台詞です。そして砂のスタンド「愚者」のイギーが助っ人に加わります。

 タロットが出尽くしたトコロで、次なる敵スタンド使いの象徴カードは「エジプト9栄神」。まずは「ゲブ神」のンドゥールが第一の刺客として登場。そしてこのンドゥールは第一の刺客ながらも最終的にかなり強かった部類です。

 「クヌム神」のオインゴと「トト神」のボインゴの兄弟とのバトルはシリアス全開だったンドゥールとの闘いとはうって変わってギャグモード。「9栄神」の幸先が不安です。


<21巻>

 刀剣に込められた本体不在のスタンド「アヌビス神」。しかも一度見せた技は通用しない、闘う程に強くなるスタンドです。「ひさびさに登場した策や術を使わない『正統派スタンド』だ」と承太郎も言っていますが、そもそも策や術を使わない『正統派スタンド』って今までどれぐらいいたのか。そしてこの正統派の強敵も最後はギャグ的にリタイア。

 対象人物を磁石にするスタンド「バステト女神」のマライアはジョセフとアブドゥルのコンビが相手に。

 そう言えば第3部のこの辺の画風って、描き文字などがポップな感じでアメコミっぽいかも。ジョジョシリーズは全体を通して考えると劇画調がメインになってるのでちょっとライトな雰囲気もあります。


<22巻>

 マライアの豹変が凄い。醜いです。これは醜い。4部の由花子といい、荒木飛呂彦の考える「イヤな女」観ってヒステリーなんでしょうか。だとしたら、僕も全く同感です。

 「セト神」のアレッシー、カードの暗示は『嵐と暴力』なんですが、その言葉から思い浮かべるバリバリの戦闘型スタンドではなく、影に触れたものを子供にする/そして弱い者いじめ、というイヤなタイプ。このギャップの作り方のセンスが荒木飛呂彦です。

 子供化した承太郎、「子供のときからやるときはやる...」「性格の人だった」。3部序盤でのホリィの回想での「子供の頃の承太郎」は美しい思い出しか見せていなかったのですね。さすが母です。

 お姉ちゃんとポルナレフの別れのシーンでの承太郎のニコリが似合わない。


<23巻>

 「オシリス神」のダービーとの闘い。このバトルは荒木氏お得意の変格的なバトル/心理戦になっているので面白いです。ポーカーで他人の魂を勝手に賭ける承太郎がとんでもないです。

 僕的にはこのポーカー勝負よりも、ジョセフが負けた「コップにコインを入れて水を溢れさせた方が負け」勝負の方が面白かったかな。

 後半は「皇帝」のホル・ホースと予知漫画のボインゴがコンビを組んでの再登場。ボインゴの予知漫画は「風が吹けば桶屋が儲かる」的に途中が省略されているので、そこがどう埋まるのかが楽しい。ところでポルナレフへの「くすぐり」は実行されなかったけど何で?


<24巻>

 ホル・ホース&ボインゴのコンビでの予知作戦もまた失敗。ボインゴは今回もジョースター一行に知られもしていません。ジョースター一行、倒した「9栄神」の数を把握してない気がします。

 次の「地獄の門番ペット・ショップ」はイギーがようやく活躍するエピソード。「9栄神」の存在が明らかになった際、『9人の男女』なんて情報がスピードワゴン財団から入手していましたが、「ホルス神」のカードを暗示に持つこのペット・ショップはです。『9人の男女』ってヌケサクもカウントされてるのでしょうか。

 鳥VS犬。神(作者)の語りを入れての解説では話を進めにくいと思ったのか、イギーが喋ります(犬語でしょうが)。一方のペット・ショップは「キョオオオン!!」「グガガガ」「キョキョーーーン」。

 復帰した花京院と合流して、ペット・ショップに辛勝したイギーの案内でいよいよDIOの館へ到着。


<25巻>

 「アトゥム神」のテレンス・T・ダービーとのゲームバトル。前巻のラストから始まったこのダービー弟との闘いは、この25巻の最後きっかりで終了。

 花京院は復帰第一戦ですが、残念にも敗北。対戦レースゲーム「F-MEGA」。この頃にスーパーファミコン出たんだったか。よく覚えてないや。ああ、花京院、せっかく復帰合流したのにもう勝つコトなくDIOに倒されるんだなあ。

 次の野球ゲームでは承太郎が挑みます。ここでダービー弟の能力が『相手の心を読む』であるコトが判明。かなり凄い能力ですが、掘り下げはイマイチ浅かったような気もします。今の荒木飛呂彦ならもっとこねくり回すでしょう、コレ。

 『心を読む』、こういうタイプの倒し方は主に2通りで、『1.分かっていても返し様のない攻撃を仕掛ける』『2.無心』、このどちらかなんですが、承太郎のとったのはどちらでもないイカサマ。ジョセフがコントローラーを操作するというものでした。イカス。

 そういやスト2で待ちガイルが横行していた頃、「こんなのダービー弟でも勝てん!!と憤慨したものです。


<26巻>

 承太郎/ジョセフ/花京院とは別ルートになったアブドゥル/ポルナレフ/イギーがまみえる相手は、この世界とは異なる空間へと移動するコトが可能なスタンド使い/ヴァニラ・アイス。DIOへの忠誠心を描写する為として、登場して9ページで自らの首を刎ねました。そしてDIOの血で復活。

 前のダービー弟戦が、ゲームというちょっとほのぼのしなくもない題材だったというのもあってか、その反動も手伝ってヴァニラ・アイス戦は異様なまでにシリアスなバトルに映ります。アブドゥルの死に方が呆気無いです。インドの時よりも、今回の方こそ死んだのが信じられないほどのあっさりぶり。イギーもポルナレフを守って死亡。アホヅラの犬として登場しながらも、最後は男前でした。

 ボロボロになってのポルナレフ勝利。ヴァニラ・アイスはDIOの血で復活したので吸血鬼と化していたのですが、それに対するポルナレフの言葉、「口の中に剣を突っこんだあたりから吸血鬼になりかけていたようだな」とあります。

 「吸血鬼=日光が弱点」って設定を作者が忘れていて、バンバンヴァニラ・アイスを光の中で活躍させてて、途中で設定を思い出したんじゃないのかとも思います。


<27巻>

 いよいよDIOとの戦いが開始。まずは「世界-ザ・ワールド-」の能力の謎っぷりが描かれます。階段を上ったはずが下りていた/柩を開いてみたら中に入ってたのは柩を開けた人物だった、という具合に見事なまでに不可解さを演出しています。

 花京院が自らの死と引き換えに暴いたその正体は、『時を止める』。最初からこうする予定だったのでしょうか。連載時には『空間を入れ替える』能力との予想もしていたのですが、少し分かりにくいし、『時を止める』方がインパクトもありますね。

 ただ、DIOが時を止めた中、ポルナレフや上院議員をえっさこら担いで位置を変えて、時が動き出した瞬間には素知らぬ顔で澄ましていたのかと思うとコミカルです。

 DIOの大衆への無関心ぶりが素晴らしい。100年前に「お前は今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか?」と言っただけはあります。

 ジョセフの波紋は「時止め」の前には通用せず、やはり最後の勝負に出るのは主人公の承太郎。100年前のジョースターとは正反対のタイプがDIOに挑みます。


<28巻>

 この28巻にて、長きに渡って続いた第3部は終了します。

 前巻から感じていたんですが、この第3部版DIOはちょっとスーパーサイヤ人っぽいデザインに思えます。特にジョセフの血で復活してからは髪も逆立っています。あとDIO、口紅塗ってるみたいに見えます。27巻の終盤から。血色良すぎ。

 DIOとの闘いの最中、『時止め』の存在を認識した承太郎にも「時止め」能力が開花し始めます。ただしDIOの5秒とは圧倒的に短い時間の2秒。この数秒の間で非常に長い台詞を言い放つDIOと承太郎。

 2転3転する闘い、途中でポルナレフの乱入もありましたが、全くイイトコなしでポルナレフぶっ飛ばされて活躍は終了。最後の最後は力比べ。承太郎(スター・プラチナ)のパンチでDIOの蹴りを圧倒。この最後の瞬間は何のひねりもなくそのままDIOを破壊。承太郎お得意のゴリ押しです。そしてDIOの敗因を承太郎が語ります。

「てめーはおれを怒らせた」

あんまりです。何はともあれ、これにて『勝ったッ! 第3部完!』。


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