奥瀬サキ


「低俗霊狩り」(小学館文庫)

上巻

 この上巻では「月刊コミコミ」にて86年〜88年(コミコミ休刊)まで連載された「低俗霊狩り」作品を収録。下巻分は4年後に「ヤングアニマル」で再開された分が収録。

低俗霊狩り

 扉に「描き下ろし」や「驚異の新人奥瀬サキデビュー!!」なんてあるのはどうにかならなかったのでしょうか。原稿紛失したんでしょうかね。

 というワケで低級霊ハンター/流香魔魅を主役に据えた読み切り。人気があったので連載になったんでしょうね。この頃「孔雀王」等でこういうオカルトホラーが流行っていた時期だったからでしょうか。ライトタッチなコミカルノリの「孔雀王」って印象です。

 んで、これはスカートめくりを繰り返す霊を退治するエピソードです。「低俗霊狩り」となってるだけあって随分とチープな霊です。

乳鬼

 流香魔魅がエロビデオのレビューのバイトをしているのが判明。今回は霊能者として同業である水前寺龍揮の登場。貧乳絡みのエピソードです。例によってハタから見たら安っぽい霊なんですが、本人的には死活問題なのか。

神勾し

 読み切りで出てきた教師が再登場。この教師、水前寺とキャラ被ってるので(というか連載にあたってこの教師を水前寺に作り替えたと思われる)、再び登場するとは予想不可でした。

幽霊階段

 今回は痴漢の霊です。ラストの猫使ってるトコロ、何してるのかよく分からないんですが。どういうコト?

降霊

 魔魅の弟/弥里が登場。このエピソードは人間心理の不可解さが出ていてイイ感じです。

時の狭間

 2時14分ジャスト、その『時の狭間』に命を落とした者は死の直前の意志を持ち、その意志に従いこの世を彷徨い続ける。魔魅への恨みを抱きながら『時の狭間』に堕ちた者との戦い。かなりの強敵なのにラストは呆気無い。

残像 

 カットバックの扱い等、ストーリーの見え難さ(←イイ意味です)が出てきて、この奥瀬サキという漫画家の一つの転換期を担う作品になってると思われます。ハズしがちなギャグ挿入は相変わらずですが、テーマがシビアになってきていたりと、話の練りがレベルアップしているんじゃないでしょうか。

下巻

彼女

 この辺りから異様に画力が向上しています。この「低俗霊狩り」を中断していた4年間で一気に画風すら変化しています。ギャグ漫画から線の少ない女性イラストへと絵が別人化した江口寿志をも髣髴させる程の変化。この「彼女」、ストーリー的には上巻ラストの「残像」には劣りますが、この低俗霊狩りの基本的な構成(初期のノリに近い)からなる作品です。

恐るべし水前寺龍揮

 「居酒屋の水前寺龍揮」「ダンスホールの水前寺龍揮」「公園の水前寺龍揮」「GOD HAND」の水前寺龍揮を扱った超短編。エロっぷりがエスカレート。

Phantom of the Railway-ファントム オブ ザ レールウェイ-

 「低俗霊狩り」中最高の出来栄えです。いじめに遭い踏切から飛び込んだ男の霊が支配する電車。この霊を如何に払うかが今回の話。序盤を除き、殆どが電車内でストーリーが進みます。閉鎖空間を舞台にページ数も最多のエピソード。イメージ的なコマ/過去挿入も絶妙、シリアス全開な中でサクッと加えられる力士絡みのギャグも面白い。

恐怖のマミ

 ラフな感じのタッチで描かれたギャグ短編。これって何かに発表したのでしょうか。

公園の散歩者1 スノウ・クイーン

 「公園の散歩者」は説明が過剰でない、読者が行間を補完するコトで完成する短編です。この「スノウ・クイーン」はカメラ横固定の舞台っぽいパートもあり、一見何のコトやら分からないコマ挿入もありですが、ラストのオチ、明確。

公園の散歩者2 エーデルワイスを唄いましょう

 魔魅の渡した絵でその後の世界を理解して旅立った、のでしょうか。

公園の散歩者3 テンシノユメ

 「エーデルワイスを唄いましょう」と正反対の構成。死者との接触/メッセージで生き続ける意志が再び沸き起こる。


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