寺沢武一


●「COBRA」1巻

 宇宙海賊コブラの冒険活劇を描いた寺沢武一の代表作。魅力は、テンポの良いストーリー運びと洒落た台詞等々、沢山。漫画は絵のメディアなんだから、その世界観は絵で表現、そんな基本的で当たり前なコトを思い起こさせる作品です。

刺青の女(前編)

 平凡なサラリーマンとして生きるジョンソンが、自分が過去宇宙海賊コブラであったことを思い出す、この「コブラ」という作品全体の導入からはじまり、「キャプテン・ネルソンの財宝」にまつわる事件に巻き込まれるファーストエピソード。

 このエピソードから登場するクリスタルボーイ、このデザインが秀逸。この巻のラストでコブラに破れますが、作者としても勿体ないと思ったのか、一回限りのキャラクターで終わらず今後も登場。コブラの最大のライバルにまで変貌します。

 女性キャラが凄いムチムチしてます。尻、最高です。コスチュームも肌の露出度が高くて、時には丸出し。今の週刊少年ジャンプ作品からは想像できないデザインです。

 ヒロインと思われたキャラがあっさり死ぬのも驚き。


●「COBRA」2巻

刺青の女(後編)

 第三の刺青を持つ女性ドミニクがいるスノウ・ゴリラのアジトへの潜入、そして「キャプテン・ネルソンの財宝」の在り処/砂の惑星ザドスへ。

 表紙の女性がドミニク。この表紙のエロさもイイ。半裸で四つん這いになって、髪をわしづかみにされてる金髪美女。ロマンです。ムッチりした素晴らしいケツは勿論こっちを向いてます。ねえ、ムーミン。

 場面転換が無駄なく行なわれ、その場その場の細かい世界設定を無理なくさり気なく描写してるのが上手いです。ハリウッド活劇的なものを、(アシスタントはいるでしょうが)一人でキャラクターや小道具、舞台のデザイン/シナリオ作成/コマ割りしてる武一のパワーに憧れます。この「刺青の女」だけで今の漫画家なら5冊ぐらいかけて描くであろう内容と密度を誇ってます。

宇宙の大魔王

 連載時は2週分だったのでしょうか。それにしてもやはり最近の漫画からは想像できないテンポの良さ。現在の漫画家はコブラを読め、読め、読んでくれ。

 アラジンと魔法のランプ的な中世ペルシャ感覚満載でスペースオペラ。大魔王なんてその気になればクリスタルボーイよりも強くできますが、終始コミカルなキャラで通しています。 

黄金の男

 今回は宇宙カジノが舞台。ミステリ的な打破もあるのがコブラ。このエピソードではカジノの支配人/ハンマーボルトジョーの「空飛ぶ腕」にどう対処するかが見どころの一つ。まあ、あっさり切り抜けますが。


●「COBRA」3巻

サイコ・ガンの秘密

 サイコ・ガンの構造を盗み、大量生産したジゴバとの戦い。身体の原子構造を変化させ即座に居場所を変えるジゴバにコブラがどう立ち向かうか。このエピソードではサイコ・ガンは意志でレーザーの軌道を屈曲させるコトが可能と判明。ただ、このエピソード以降曲げてたかどうか覚えていませんが。

雷電の惑星

 ルーン美術館の竜水晶を狙うコブラとベガ。コブラの着想って「宇宙でルパン3世」なのかなあ。ベガが時折発作を見せ、その度に「急がねば」と言ってるのですが、それが何ゆえの発作なのかラストで分かります。予想していた流れを覆す発作の意味が上手い。

地底の客

 西部劇風の世界観。相変わらず何でもアリの世界観ですが、そこが素敵。全裸で四つん這いの女性がわらわら出てくる辺りも素敵。ライフル星での海賊ギルド地下麻薬工場にコブラが挑みます、いつの間にか巻き込まれて。

ラグ・ボール<前編>

 銀河パトロール隊員ドミニク再登場。海賊ギルドの麻薬売買ルートを押さえるべく、コブラがラグ・ボール選手として侵入。実際に試合の様子も描かれ、かつ如何に麻薬売買の確証情報を外部へとコブラが伝えるかが見どころ。試合自体も悪逆非道なチームが相手だけにコブラの反撃がとってもカタルシス。


●「COBRA」4巻

 表紙のドミニクがムチムチしてて素晴らしい。口絵CGのシエラのエロエロボンデージも最高。

ラグ・ボール<後編>

 3巻収録分の前編でラグ・ボールの試合に関しては終了していて、これは麻薬ルートが摘発され捨て鉢になったラグ・ボールオーナーの放った怪物マーメイドとの戦いが描かれます。エネルギーをひたすら吸収する強敵マーメイドですが、割とあっさり始末。

二人の軍曹

 6人の中で誰がスパイなのか?という「そして誰もいなくなった」的なノリのエピソード。シエラのコスチュームデザインがいやらし過ぎ。出るコマ、たいていケツが描かれてます。ケツしかないコマもあります。ていうかケツしかないコマの方が多いんじゃないのかってぐらい。

 アヒルみたいな「ダッグ」というキャラが「刺青の女」の時と同様に出ていますが、同名同デザインの別キャラ。お遊び的な部分でしょうか。

ロボットはいかが?

 解決方法が意表を衝いています。ネタとしては古典的ながらも、連載作品でひょっこりこんなコトをされると感動。

死の商人

 クリスタルボーイ再登場。都市を舞台にしたアクション型のエピソードです。

海底の墓標

 海、そして海底を舞台に海賊ギルドの首領の一人/アイアンヘッドとの闘いからなるエピソード。海なら水着、なのですがこの「コブラ」という作品はそもそも女性キャラの露出が高めなので別に関係ない。ていうか海に水着は当然のシチュエーションです。異常なシチュエーションの方が燃える自分ですから、嬉しくない。

シドの女神<前編>

 海賊ギルド宇宙軍元帥/一万隻以上のギルド艦隊総司令サラマンダーとの決戦。連作ものの様相を成す「コブラ」の中で、ストーリー的にもかなりの盛り上がりを見せるエピソードです。ドミニクの死、アーマロイド・レディをも破壊されたコブラの戦い。

 この前編には右手に連射ブラスターを仕込んだドーベルという男が登場。左手にサイコ・ガンのコブラと対をなすキャラ造型なんですが、あっさりとやられてます。


●「COBRA」5巻

シドの女神<後編>

 この5巻は一冊丸まる「シドの女神<後編>」です。

 サラマンダーへと立ち向かうために、過去(整形前)の戦友の力を借りる為の仲間集めの小エピソードが連続して入ります。早撃ちと変身能力を持つドグ、怪力男パンプキン、聴覚、嗅覚、視覚の優れたバッド。刑務所の惑星にいるパンプキンを救出するトコロでまた「ダッグ」がいますね。手錠をかけられしょんぼりしてる絵、ここは流石に笑っちゃいます。

 ギルドのカジノステーションにてサラマンダーの暗殺作戦。真っ向勝負ではなく暗殺を計画するコトで、サスペンス感を上手く演出しています。

 そして最後はバレンタイ星域/エラルド教国でのサラマンダーとの決着。首長ミラールが全身レオタードのデザインでこれがもう尻丸出しの絵に見えて大満足。レーザー光線を備えた死の衛星/シドの女神の発動、これを如何にして食い止めるかが見物です。最後に明かされるサラマンダーの正体もイイ。


「COBRA」6巻

黒竜王

 コブラの整形以前のエピソードがちらりと判明します。この「黒竜王」というエピソードはクライマックス感があってまるで最終回かと思わせるぐらいスケールの大きな話です。ラストの演出は絵的にコミカル。

黒い弾丸

 短編で、二重人格というワンアイデアもの。長編と短編でスケールに差があるんですが、どっちも上手いですね。長編は世界観から構築してその中で最大最後の闘いという物語を作ってるし、短編では謎の判明が物語のほぼラストに位置するミステリ風味の味わいの作品が多い。

異次元レース<前編>

 別宇宙/異次元の存在というある意味大規模な世界観設定も、レースという一回性のネタで消耗する辺りが寺沢武一らしいです。しかもこのレース、レース自体よりもジェイソンを追うのが目的になってます。長編だけど、ちょっとした連作スタイルかも。

 この前編では和風世界に突入。ジェイソンとコブラが突入する時間にはズレがあるみたいで、1年の差がここではありました。伏姫がヒロインの中編という感じ。ここで終わってても切なくてイイ。更に後編へと追走劇は続きます。


「COBRA」7巻

異次元レース<後編>

 異次元レース後半は処刑星、そして当エピソードを締めくくる雪の世界。処刑星は特に何もアイデア的なものはないんですが、純粋に画力の高さで楽しめます。最終ステージではジェイソンが降り立ってから既に30年の歳月が過ぎていて、もうジェイソンは闘う気なし。「冬の魔神」なる存在の正体とそれを如何に倒すかが焦点になっていて、異次元レース導入部からホントに目的が変わってます。ラストは随分あっさりしてます。伏姫と被ってる終わり方ですが。

黄金とダイヤ

 人形使いマリオってのがベタながらもプチフェイク。シュミット中尉のコスチュームがとってもエロいです。ああ、やっぱ武一の描く女性は下半身が素敵。終盤のトリック的な部分を読んでああ、コブラはルパン的でミステリ的だなあと改めて思った。

黄金の扉<前編>

 扉絵が浜崎あゆみ風。20年ぐらい前の絵だからこの頃浜崎は幼児程度でしたでしょうが。

 何者かによって軌道の変えられたガロン星の軌道を正常化するために推進部へ突入しようとする銀河パトロール(担当隊員はシークレット)、そして軌道をそのままにして太陽系を破滅させようとする海賊ギルド(ブラックボーンとゾロス)、そこに巻き込まれるコブラ。前編ラストでは軌道抑制に必要とされる「シバの鍵」が破壊されてどーすんのって感じで終了。ていうかかなり小さいコマで破壊シーンがテキトーに描かれてます。敵のゾロスがイイ感じ。ヒツジだからって牡羊座と決めるコブラの挑発もイカす。


「COBRA」8巻

黄金の扉<後編>

 ブラックボーンはどうなったのやら。別エピソードに跨がるコトはあってもあんな勝ち逃げで終わったのは珍しいかも。鍵穴は女性の形になっています。鍵は、シバが自分に似せて完璧なプロポーションを持つ女。シークレットによって扉は開き、「どうコブラ世界一のプロポーションを持つ女を目の前にして御感想は?」と得意がっていますが、ゴロゴロ死体が転がってる辺り、ここまで到達した世界一もかなりいたみたいです。

 ラストの「穴があいているはずだ」は、投身自殺でガラスが割れているってコトでいいんですよね?

神の瞳

 神の瞳と呼ばれる2つで1つの宝石を狙う武器商人パピヨンとの闘い。ゴキブリ集合体やカッパ、ゴム人間など敵が楽しいんですが、それよりもこのエピソードではサイコガン絡みの中盤が珍しい展開かも。

 壊れたサイコガンのスペアを求めて造り主のいる日本へと向かい一度はスペアサイコガンを手にするも自ら捨てるコブラ。その後ゆう子の死によって再び戦いの中に身を置くのを誓うという、物語の流れとしては王道なんですが、戦いをやめるに至る心理描写が希薄で唐突に思えます。絵がウリとして前面に出てる作品なのでどうでもイイんですけどね。

マンドラド

 最初に登場したのはボニー(黄金の扉編登場)だろうか? コブラガールは名前が出ないと区別つかないです。長編っぽい導入でしたがあっさりとした短編。


「COBRA」12巻

聖なる騎士伝説

 敵や世界観デザインがカブトやゴクウ寄りかも。武一漫画は世界観の造り込みがさりげなく、言葉での主張なしに細かい。スターウォーズの、ちょっとしたシーンでもじっくり異形面白デザインが成されてるような、見てて飽きない味があります。

 このエピソードは3人の鬼を順々に倒していく分かりやすい構成で、その点では意外性を楽しむとまではいきませんでした。玄武鬼の正体が鳥に喰われたと思われてた女、ではなかったのが予想外。

リターン コブラ

 ちょっとした短編で、別に凄い内容ではないんですが、タイトルといいこの文庫版全12巻のラストに配置するのにちょうどいいかも、と思わせる話。


●「BLACK KNIGHT バット」(バーガーSC)

 漫画でも小説でも「この作家は誰々風の作品を書(描)くなあ」、という読み手それぞれの印象はあるかと思いますが、様々な既成品の中からその作家の食指/琴線に触れたものを選択し取り込んで『その作家』は出来上がってるので、行き着く所は『1作者1ジャンル』。

 それを踏まえても、やはり『寺沢武一』というジャンルはずば抜けている。とりわけ世界観の構築が素晴らしい。もっと長々と説明したいであろう特殊な舞台(世界)を脇に置いて、あくまでもスポットは主人公。

 この「バット」は主人公バット・デュランが異世界レインボーリアの故郷「星船」へと戻るトコロからスタート。「コブラ」とはひと味違ったコミカルさが前面に押し出された連作ファンタジーです。奥付を見たら発行は1990年。10年以上も前の作品ですが、今日日の漫画よりも内容が濃い。武一素敵。


「武 TAKERU<全2巻>」(MF文庫)

 「双瞳の女王編」とサブタイトルが付いていますが、他にも「武」の物語を描くのかどうか怪しいトコロです。

 ストーリーはパラレル日本を舞台に、主人公のタケルがヒミコの野望を打ち砕くというもの。舞台の特殊性を除けば、コブラに組み込んでも別に違和感のない物語です。ていうかやってるコトはフツーにコブラ。なのでコブラ好きの僕には楽しいストーリーでした。女性がTバックでハイキックしてるシーンとか特に。

 僕の手元にあるのはメディアファクトリー文庫版なんですが、この作品はどうせならカラーのデカいバージョンで読む方がイイと思いました。元々はフルCG作品なので、文庫ではその魅力が全くと言っていいほど薄れてます。高くてもフルCGバージョンがオススメです。女性がTバックでハイキックしてるシーンとか特に。

 巻末に収録されてる寺沢武一インタビューによると、これは相当時間かけて作画された作品みたいです。はっきり言ってアニメブックみたいな印象を受け、作者が苦労してる程の効果を上げてるのかどうか多々疑問もありますが、寺沢武一自身がこういうのがやりたいんだから仕方がないです。

 CGの技術は日進月歩、加速度的に向上してるので、作者がこの「武」を描いた頃のツールは現在なら誰のパソコンにも常備されてるレベルです。それでも今日日のCGよりも上手いと感じるのはデッサン等基本的な画力が高いからか?


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