岡崎二郎


「アフター0」1巻 《ミステリーゾーンへようこそ》

種を蒔く男/オクラホマおじさんの逆襲/ほうき星翔ける街角/オフィス/モルヒネ綺譚/最高の晩餐/シュリーファー博士の優雅な研究/沈黙の侵略者/地球を測った男/語れよ真空の中で/永遠の問いかけ/たった一匹/いつか聞いた鐘の音 以上13編収録

 単行本初収録作品も含む、著者再編集版として全8巻を予定されてる作品集です。1巻は《ミステリーゾーンへようこそ》のSF編。ジャンル別に構成し直されてるのでオチの方向性が確定されている、ゆえに驚きが薄められるのではないかと考える向きもあるかも知れませんが、実際に読んでる最中はそんな考えはどっかに行っちゃいます。

 これらの短編のイメージは、『星新一のショートショートを漫画にしたような感じ』、でしょうか。短編というと何も起きない断片的な作品が多く、それらも僕は好きなんですが、この岡崎二郎の短編は、長編を無駄なく短くまとめた印象があります。何かしら優しさを漂わす各編のラストも前向きな気持ちにさせます。

 「種を蒔く男」の「子供がピストルを手にしていたら...あなたはどう思いますか?」が印象的な台詞。昔読んだ作品で当時も印象的だったのでココ記憶に残ってました。


「アフター0」2巻 《犯人は誰だ!?》

三月の殺人/干支興業の降参/私の心にダイヤルを/動かぬ証拠/ペルセウスの帰還/楽園の問題/誰が森を燃やしたか?/白の回想/夢は春とともに 以上9編収録

 2巻は《犯人は誰だ!?》のサスペンス編。ストレートに犯人探しのミステリタイプのみならず、謎が解き明かされるカタルシスを味わえる作品が選出されています。

 それにしても各短編、これだけの密度を1話に凝縮する作者は凄いです。「私の心にダイヤルを」のミスリードのさせ方など上手いし、「誰が森を燃やしたか?」の意外なラストにも感動。


「アフター0」3巻 《大いなる眠り子1》

大いなる眠り子/遠い歌声/オムツ戦争/赤ん坊がいっぱい/長寿の重さ/長命人龍男の優雅な生活/別れの扉/なぜ、久留米氏は.../あなたのナンバーはいくつ??/ただいま転生中!!/不思議なじいさま 以上11編収録

 3/4巻には「大いなる眠り子シリーズ」が収録(違うのもありますが)。このシリーズは、死んだ夫の魂が赤ん坊の身体に入ってしまった状態で妻(母)と共に様々な事件に立ち向かう内容です。

 第1話に相当する「大いなる眠り子」、ラストで父親の魂が消えてますが、人気があって方向修正加えてシリーズ化したのかなあ。「と言いつつしっかり続く」と最後のコマの下にありますが、これって今回の再編集版で付け足したのかな? 2話以降でたまに赤ちゃん状態になるって理由ついてるけど、1話の段階では終わってそうです。

 夫婦と赤ちゃん、2人で3人という奇妙な関係を前提にして、話の作りはいつも通りの密度。長命人などという「頭は大人で身体はまだ赤ん坊」というアイデアもこのシリーズに絡めてこそのネタですね。


「アフター0」4巻 《大いなる眠り子2》

妖精伝説/女優/私を嫌った女優/小さな勇者たち/二人ぼっちの目撃者/H氏最後の挨拶/恐るべき3歳/永遠のメロディー/最後の眠り子/真珠は語る 以上10編収録

 赤ちゃんならではの利点/難点を上手く入れ途中ハラハラ最後にホロリの物語を紡いできた「大いなる眠り子シリーズ」のラストエピソード他を含む4巻。

 世の中のありとあらゆる事象は、同じコトでも正反対の捉え方が出来るんですが、岡崎二郎の作品はその2通りの捉え方の内、前向きな捉え方をラストに選択するコトが多く、しかもそれが何も考えてないポジティブバカではなく、冷静な視点(オトナな視点)での前向きさを持っています。それが、各編ラストに漂う優しさを演出しています。


●「アフター0」5巻 《人類新進化論》

あの世の方程式/匂ひを嗅ぐ女/コンマ○○秒の落とし穴/幸せはどんな色/幻の点景/みにくいアヒルの子/未来の思い出/会社夜話/大きな角を持つ男/OH!!ラッキーマン!!/未来の種馬たち/ひらめきの構図/マイ フェア アンドロイド 以上13編収録

 4巻までとちょっと印象の異なるシビアなラストが多かったようにも思えます。一見素晴らしい特殊能力に対してネガティブなラストで締めくくるのが多めで。相変わらず、全体的にどれも質の高い作品なのには驚きます。短い中にどんでん返しを盛り込む作者の趣向が素晴らしいです。

 「マイ フェア アンドロイド」の切ない残留が特に気に入りました。登場人物を使い切る手腕/切れ味が素敵。ていうか無駄な登場人物はハナから出さずに纏めあげてますね。


●「アフター0」6巻 《ファンタジックワールド》

真夜中の影法師/風の花嫁/闇の中のささやき/ガリバー/光の楽園/反撃の負/願かけのバー/初恋の肖像/打出の小槌/ショートショートに花束を/最後の雪女/雪に願いを/かまくらの夜/世界はサンタを待っている。/宿命の構図/800年のメッセージ/時の向こう側/恋愛回線 以上18編収録

 6巻は18作品とかなり多めの収録。その分一つ一つが普段よりも更に短いのですが。「真夜中の影法師」なんか7ページですが、それでもキチンとオチを入れてくるのが凄い。

 「800年のメッセージ」が気に入ってます。もっとベタな方向に落とすと思ってたので意表を衝かれました。適度に肉付けして膨らませて映画化しても通用しそうです。ていうかどれもアイデアの宝庫に思えます。深夜枠30分で放送して欲しい。


「アフター0」7巻 《生命の鼓動》

のみこむ/遥かなる口笛/あなたの声が聞こえる/白い世界の彼方から/楽園への招待/日本で一番偉い猫/爬虫類めずる姫/東京カルガモストーリー/人猿の湯/恋は利己的/花だより/ふしぎの島の贈り物/ガラス箱の生き物たち/乾いた大地の贈り物/熱帯雨林は永遠に/狩人 以上16編収録

 6巻もそうだったのですが、この7巻も収録作品数多いです。この16編の中には、今回の著者再編集版で初めて単行本に収録される作品も多くあって、昔の単行本で読んでいたコアなファンにも嬉しいのではないでしょうか。僕はほとんど初読なのでその辺は推測ですが。

 未収録だった作品はオチが微妙にスマートじゃないのかなあ。充分楽しめるのですが、作者的に自分に厳しい目を向けてたのかも。その辺は推測ですが。


「アフター0」8巻 《未来へ...》

悪魔の種子/究極のホラー/エイリアン北へ行く/赤富士/小さく美しい神/幸福の叛乱/想い出は結晶の中に/進化の果て/無限への光景 以上9編収録

 「小さく美しい神」「幸福の叛乱」「想い出は結晶の中に」「進化の果て」、この後半4編は大洋電機社を舞台にした連作になっています。更に、「進化の果て」は歴代「アフター0」キャラがバシバシ出てくる上に、内容もこの「アフター0」全体を締めくくるに相応しいものになっています。歴代キャラが出てきた時には『この作者は自作に意識的/何を描いたかきちんと把握してるんだなあ』と素で感心しました。荒木飛呂彦あたりはどんどん設定忘れてそうですから。

 そして大団円ノリの「進化の果て」が最後ではなく、もう1本「無限への光景」、これをエピローグ的にオーラスに持ってくる辺りが非常に素晴らしいです。構成の妙技です。

 この「アフター0」、好評だったのか9/10巻の刊行が決定されたそうです。この8巻の締めくくりの美麗さが微妙に壊れちゃうし、カバーなんかにも<全8巻>と書かれちゃってますが、とにかく出るのは純粋に嬉しい。


「アフター0」9巻 《トワイライト・ミュージアム1》

仏陀降臨す/滝の神/ミッシング・ライフ/沈黙のアスリート/契約/勝利の女神/城壁/ESP'sワルツ〜第1楽章〜/ESP'sワルツ〜第2楽章〜/二つの山の物語/機械仕掛けのジャングル/遥かなる孤島

 「トワイライト・ミュージアム」という作品がどういう位置付けだったのか分かりませんが、この作者の描く作品は総じて「アフター0」ワールドとして括るコトができる感じです。長編もまた不可思議自由自在の岡崎二郎ワールドが展開されてるのかな? 長編はまだ読んだコトないんですが。

 この9巻ではラストに収録されている「遥かなる孤島」が出色。切ないです。何度も書いてる気がしますが、岡崎二郎は短いページの中に濃度のある物語を描き出すのが素晴らしい。

 「仏陀降臨す」が作者のデビュー作品のようで、初っ端からやはり2転3転するストーリーテリングぶりです。「二つの山の物語」の微妙に腹黒いオチも印象に残ってるなあ。

 「沈黙のアスリート」は妙なラストでした。あれは...感動するシーンなのか?


「アフター0」10巻 《トワイライト・ミュージアム2》

手の上の友人/ハイテクの背徳/乾いた大地の水の街/黥面上のアリア/幸せの十円玉/歯/レムの接点/幸福アレルギー/朝貌の文/星の訪問者

 1冊読むのに他の漫画よりも時間かかりますね。読みごたえがありました。コストパフォーマンスがいいです。ってアフター0感想では毎回そんなコト書いてますが。

 この10巻では一発目の「手の上の友人」、これ凄いストーリー展開が上手いと感じました。ミスリードのさせ方も冨樫的で、漫画慣れしてる人も騙されるんじゃないでしょうか。想定してるオチから更に2転しました。

 「乾いた大地の水の街」のラストが一瞬戸惑いました。「こんないいとこ」って立石の男気ってコトだと一読で気付かなかった。「黥面上のアリア」が何気にこの10巻収録中で感動ベストかも。理詰めじゃない部分が最後のオチに繋がってるので人によってはこのストーリー展開気に入らないかも知れませんが、何かえも言われぬ感動が残ります。ハッピーながらも切なさが尾を引くラストです。


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